●ルノー・日産が内紛にかまければ競争に負けて弱体化のリスクも
この具体策は2019年初にも表面化する公算が高いと考えられてきただけに、その直前で起こった今回の体制崩壊は、何ともいいようがない絶妙なタイミングであったのだ。
自動車産業は100年に一度といわれる大変革期に入っている。これは、クルマが常時インターネットにつながるIoT端末となることで大きな拍車がかかる。
伝統的な自動車産業のビジネスモデルとは、巨額の設備投資を実施し、その資本回収のスピードを競うゲームであった。ところがモビリティサービスではネットワークのプラットフォームを築き、サービスを提供する事業者を囲い込んだエコシステムを構築できるかが重要な競争力であり、移動距離や利用時間をもとに課金する新しいビジネスの拡大に対応していかねばならない。
競争力の源泉が変わり、クルマの価値は革命的に変化し、ものづくりを中心とした産業構造が崩れる。このような大変革の中で、自動車産業は生き残りをかけた戦いに挑まなければならない。これはもはや企業間競争を超えた、国家間競争の様相を呈している。
巨大な投資と開発に耐えていくためには、1000万台を超える生産規模を持つ企業連合を形成することは重要だ。ルノー・日産が内紛によって時間を浪費したり、離別するような事態が起これば、このまま両社が弱体化するリスクもあるだろう。今回の問題が、世界の自動車産業の競争に影響を及ぼすことは間違いない。自動車産業への影響は詳しく別稿で展開したい。
(中西孝樹:株式会社ナカニシ自動車産業リサーチ 代表アナリスト)