そのアンチテーゼとして05年に登場した食べログは、「口コミ」情報を主体にした。情報の発信者を消費者側にすることで、サイトの信頼性を高めていった。

 そのビジネスモデルは、広告収入や消費者がプレミアム会員として支払う月額課金などを収益源の柱の一つとするものだった。

 新プランを導入して以降、収益の軸足は飲食店側にさらに移っている。もともと、上位表示プランといった飲食店向け有料サービスは09年から登場しているが、食べログの飲食店販促事業による収益比率は16年度第1四半期が67%で、18年度第1四半期には77%まで拡大した。

●アンチテーゼ的食べログが裏で店に課金

 消費者の前ではアンチテーゼ的存在として振る舞いながら、裏では飲食店からカネを搾り取る──。食べログの業績をそう解釈する業界関係者は少なくない。

 飲食店側の不信感は募るばかりだが、それでも「食べログの販促サービスを利用しないわけにはいかない」とある飲食店の店主。「そうしないと“表示順”が下げられるんだもの」。さて、これはどういうことか。

 食べログには二つの検索表示が存在する。一つは「ランキング検索」と呼ばれる、口コミの星の数に基づいた表示順である。口コミによる星の評価は、その不透明さが度々話題になってきたが、基本は契約内容によらないで点数が決まるとされている。

 もう一つの表示順は、「標準検索」と呼ばれるものだ。ここでは食べログの集客サービスを多く利用している、つまり基本的に高いプランを契約している店舗が優先的に掲載される。

 利用率の高いスマートフォン上では、プレミアムサービスに登録している消費者しかランキング検索ができないなど、多くの消費者は標準検索に“誘導”されている。

 この点について「食べログの口コミはあくまで強みの一つ」と話すのは、食べログ事業を担当するカカクコムの竹内崇也執行役員。「今や食べログの掲載情報の多さで利用しているユーザーも多く、飲食店からの課金と口コミの点数を絶対に連動させないポリシーを守っていれば、送客量に見合った対価をもらうのは当然のこと」と説く。

 巨大な集客メディアとして成長した食べログを使うかどうかで、店の集客に雲泥の差が出ることは、多くの飲食店が認めるところだ。不満を抱こうが、食べログを使わざるを得ないのが実情である。

 では、食べログは影響力を振りかざして暴利をむさぼる極悪非道と断罪すべきかといえば、事はそう単純ではない。彼らも生き残り策を講じることに必死なのだ。

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「アプリ」を制する者が「食」を制す!