グランドミュージカル「エリザベート」といえば、日本で最も人気の高い演目の一つ。オーストリア帝国皇后エリザベートの生涯を軸に、帝国支配の終焉と新時代の萌芽を描いたこのヨーロッパ発のミュージカルは、ミュージカル俳優なら一度は演じてみたいと思うような、魅力的な役の宝庫である。現在、押しも押されもせぬミュージカル界のエースである古川雄大さんが、ミュージカルの難しさと面白さ、その両方の洗礼を受けたのもこの「エリザベート」だった。若手俳優の登竜門と呼ばれるエリザベートの息子・ルドルフ役を、オーディションで掴んだのは11年前。24歳のときだった。
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「当時の僕は、映像や舞台をいろいろやらせていただく中で、まだ自分がどういう俳優になっていくのか、将来のイメージが掴めないでいました。そんな中、たまたま仕事の一環として、『エリザベート』のオーディションを受けたら、受かってしまった(苦笑)。稽古のときも実力がまったく伴わなくて、ものすごく苦戦しました。でも、稽古を通して深く作品を知り、ルドルフという役を掘り下げていくうちに、僕自身が、役に魅了されていったんです」
本番を重ねるにつれ、感情の高ぶりや悲しみを歌に乗せて表現できるミュージカルというのは、なんて素晴らしいんだろう、と思うようになった。もっとこの表現を突き詰めていきたい。いつかは、主要キャストの一人である死神・トートを演じられるようになりたい──。俳優になって初めて、自分の未来に明確な目標を見据えた。
高校卒業後、長野から単身上京して1年間、テーマパークのダンサーを務めたこともある。肉体を使って自分自身を表現することに興味はあったが、「目立ちたい」とか「人気者になりたい」という気持ちは、そんなに強いほうではなかった。ミュージカルの舞台で、人前で堂々と自分の歌唱を披露することに、最初は照れがあった。