誰にとっても大切な社会保障だけれど、理解するのは難しいし面倒。そう思っていた私にとっても本書はわかりやすく、かつ、深かった。著者は内閣審議官として「社会保障・税一体改革」をとりまとめた経歴を持つ。改革の是非はさておき、まず虚心にページを繰れば、市民の不安に向き合う著者の姿勢に気づく。所得格差の広がりや政治不信について率直に語り、自らの関わった改革によって社会基盤が壊されたことにも言及している。「負担のない給付はありません。ないのです」と増税の必要性を確認しつつ、その合意を得るには政治に携わる者が汗をかかなければならないと説く。
平易な語りによる読みやすさもさることながら、本書を貫く社会保障の哲学には新鮮な感動がある。誠実な言葉への感動とも言えるかもしれない。
※週刊朝日 2017年7月14日号