2021年11月に出会ったという草刈健太郎さん(左)と安倍昭恵さん(写真:上田耕司)
2021年11月に出会ったという草刈健太郎さん(左)と安倍昭恵さん(写真:上田耕司)

アメリカ人の夫に妹がナイフで殺害され…

 8日の映画祭に出席していた草刈さんは大阪市に本社のあるカンサイ建装工業の社長で、映画の主人公でもある。05年12月1日、映画の脚本家になる夢を抱いていた妹が、アメリカ人の夫にナイフで殺害されたことをきっかけに、13年から「日本財団職親プロジェクト」に参加。当初、活動に気が進まなかった草刈さんだが、ある青年と出会ったことで、のめり込むように、刑務所や少年院を出た人に住居や仕事を紹介する更生支援活動を行っている。

 昭恵さんと草刈さんの出会いは21年11月、昭恵さんが会長をしている社会貢献支援財団に表彰されたことに始まる。

「東日本大震災の津波で児童74人と教職員10人が犠牲になった、宮城県石巻市の大川小学校で息子さんを亡くされた父親が、昭恵さんに私の活動を財団で表彰してはどうか、と推薦してくれたんです。安倍元首相が健在だった頃です」(草刈さん)

翌年の22年3月に行われた、震災当時の在校生と同じ108本の竹灯籠(とうろう)に明かりをともす「大川竹あかり」に草刈さんも昭恵さんと参加。こんな会話を交わしたという。

「昭恵さんから『受刑者たちの更生に興味があるの。草刈さんが少年院などでの活動をやっているんだったら、私も一度行きたいわ。何かお手伝いできることはない?』と。でも、22年7月に安倍元首相が亡くなって、すぐには実現できませんでした。しばらくしてから、あの時の約束を果たそうと、僕から昭恵さんに『少年院に一緒に行きませんか』と声を掛けたんです」(同)

 仙台市若林区の東北少年院を昭恵さんと訪れたのは23年11月だった。体育館に集まった20~30人の少年の前で話をした昭恵さん。「犯した罪を反省して。自分自身に足りないことがあれば相談したらいいの。助けてくれる人がいるから」と話し、涙を流しながら「私は主人を殺した人を恨まない。自分自身が憎んでしまったら悪の連鎖になる」と言っていたという。

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