
8月23日、第107回全国高校野球選手権大会の決勝が行われ、沖縄尚学と日大三(西東京)が対戦した。1点を争う好ゲームは、持ち味の「鉄壁の守備」を心にとめ続けた沖縄尚学が3対1で制し、夏の甲子園初優勝を飾った。沖縄県勢としては2010年の興南以来2度目。
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最後の打球が遊撃に飛んだ。
「来た!」
沖縄尚学の主将で遊撃手の真喜志拓斗は喜んだ。「鉄壁の守備」をベースに戦ってきた沖縄尚学は準決勝の山梨学院戦で4失策。気を引き締めて決勝に臨んだはずだった。
しかし、初回の守備で日大三・先頭の松永海斗に遊撃内野安打を許す。二遊間に高く弾んだ難しい打球を処理したが、一塁送球がワンバウンドした。失策ではないが、真喜志は自分のミスと捉えていた。
「僕のミスで走者を出して(日大三の)先制につながってしまったので、どこかで取り返したいと思っていました」

2点リードの九回裏。2番手投手・末吉良丞の失策も絡んで1死一、三塁のピンチ。日大三の代打・永野翔成の痛烈な打球が遊撃に飛ぶ。真喜志は「体で前に落とそう」と冷静だった。冷静にこぼれた球を拾って二塁へトス。二塁手の比嘉大登が1塁へ送球し併殺が完成した。試合終了。沖縄尚学初の夏の甲子園優勝が決まった。真喜志は言う。
「最後に、これまでやってきた僕らの野球が見せられたと思ってうれしかった」

失策が続いた準決勝の試合中に、ベンチで「こんな情けないプレーをして最後を迎えるのか」と檄を飛ばしていた比嘉公也監督は「最終回に嫌な走者の出し方をしてしまったが、最後の最後にうちらしい野球ができた」と決勝を振り返った。
決勝当日は真喜志の母親の誕生日でもあった。優勝が決まった直後のアルプススタンドではハッピーバースデーが歌われる場面も。真喜志は「母は本当にかけがえのない存在。どんな時も僕を支えてくれました」。どんなお母さん?の質問には「優しい、本当に優しいです」と照れ臭そうに笑った。
