
昨年のこの時期、千葉の新米の仕入れ値は60キロ2万5000円ほどだった。今年は、前述のとおり、千葉県産の早場米は買い取り価格の時点ですでに同3万円超だ。そこに集荷業者のマージンが上乗せされる。
「今年は、3万3000円と言われています」(中村さん、以下同)
「米の相場の先行きが読めない」ことも悩みの種だ。昨年の新米の仕入れ値も高かった。しかし、時間が経つにつれて、価格は落ち着くどころか上昇を続けた。
「最初は『高い』と思った価格が、実は底値だった。今年もそうなるのか。正直、わからない」
「小泉米」の売れ行きはよくない
そんななか、小泉進次郎農林水産相は8月20日、随意契約で放出した政府備蓄米について「8月末」までとしていた販売期限を延長すると表明した。
中村さんは、この「小泉米」の放出当初から「8月末までに売り切るのは無理」と指摘してきた。
「農水省は、米の輸送や精米といった我々の現場を知らなすぎる、としか言いようがない」
「小泉米」は令和3年産(2021)と4(22)年産だが、「あまりにも古い米を販売して、クレームが相次ぐような事態になれば、店の信用に傷がつく」として、中村さんは仕入れなかった。
「他店に状況を聞くと、『小泉米』の売れ行きはよくありません。1回は買った人も、食べてみて『まずい』と感じたら、もう買わないでしょう」
江藤拓前農水相在任時の今年3月に一般競争入札で放出された令和6(24)年産米、5(23)年産米の味は「まずまず」(中村さん)だという。ただし、「江藤米」の仕入れ値は「小泉米」(60キロ1万700円・税別)の倍以上。これを中村さんは5キロ3600円で販売してきた。
米の価格は二極化が続く
現在、店頭に並ぶ佐賀県産の新米「七夕こしひかり」は同4900円。昨年産の新潟県・魚沼産のコシヒカリと同じ価格だ。
「七夕こしひかりは仕入れ値からすると、かなり割安な価格で提供しています」
昨年産の米も「江藤米」も、在庫はほぼ払底しているという。
「他店の状況もほぼ同じです。今後、消費者の選択肢は、5キロで2000円前後の『小泉米』、もしくは5000円前後の新米、となってくるはずです。有機栽培米などは6000円超の新米もあるでしょう」
記者も「小泉米」を購入したが、食味はともかく、古米臭が気になり、家族にも不評だった。コンビニのビンテージ米おにぎり(23年米)も食べてみたが、口の中に独特の風味が残り、閉口した。
いつになれば、米価をめぐる混乱は収束し、おいしい米を「適正価格」で食べることができるのだろうか。
(AERA編集部・米倉昭仁)
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