大型コンバインによる収穫作業=米倉昭仁撮影
大型コンバインによる収穫作業=米倉昭仁撮影

農家「5キロ3500~4000円で届けたい」

 2023年まで全国の買い取り価格は同1万2000円程度で推移してきた。米の買い取り価格は米農家の収入と生活に直結している。生産コストは同1万5000~1万6000円なので、ほとんどの米農家は採算割れに陥っていた。

 翻っていま、この状況は農家にとってはありがたいことではないのか。だが、伊藤さんはこう話す。

「いくらなんでも高すぎですよ。千葉の新米を5キロ5000円超で販売しているところもあります」

 伊藤さんは米価が高騰を続けることを心配していた。伊藤さんが適正と考える出荷価格は60キロ2万5000円から3万円。それを5キロ3500円から4000円で消費者に届ける。

「そんな価格設定を考えて米作りをしているんだけれど、現実にはそうなっていない。生産者としては少し残念です」(伊藤さん)

新米の価格「目に見えて下がることはない」

 もうじき8月も終わる。9月になれば、早生品種からコシヒカリなどの出荷に切り替わる。

「そのころになれば、新米の価格は少し落ち着くかもしれない。でも、目に見えて値が下がる、ということはないでしょう」(同)

 というのも、昨年産の銘柄米の販売価格が高止まりしているからだ。全国のスーパーで8月4日から10日までの1週間に販売された銘柄米の平均価格は5キロ4239円(税込み/以下同)で、最高価格の同4469円(5月12~18日)からほとんど値下がりしていない。都内のあるスーパーでは、同6000円超の魚沼産コシヒカリやひとめぼれが売られていた。

「最も高い時期に4万円前後で仕入れた米は、損切りしないかぎり安く売れない。新米はそれと同等か、それ以上の価格にしないと、昨年産の銘柄米が売れ残ってしまう。米屋さんもスーパーもそれぞれの事情があって、いくらで売るか、決めるのは大変だと思うよ」(同)

米相場の先行きが読めない

 東京近郊の老舗米店の店主、中村真一さん(仮名)によると、千葉県産のコシヒカリの買い取り価格が決まると、その価格が新潟県や東北各県の米どころに影響するという。

「去年は千葉の米の買い取り価格が高かったので、それに他県の米の価格が引っ張られた。落ち着いた価格になればいいのですが」と、中村さんは期待を込めて語るが、現実は厳しい。

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