
第107回全国高校野球選手権大会の決勝は、日大三(西東京)対沖縄尚学(沖縄)の組み合わせとなった。
【写真特集】沖縄尚学、夏の甲子園では初の決勝進出「深紅の大優勝旗を持ち帰りたい」
日大三の決勝進出は2011年の第93回大会以来、14年ぶり3度目で、過去2度とも優勝している。
一方の沖縄尚学の夏の決勝進出は初で、県勢としても2010年第92回大会の興南以来15年ぶりだ。今大会の沖縄尚学はここまで、初戦で金足農(秋田)を1-0の投手戦で制し、3回戦では仙台育英(宮城)を延長十一回で下す。さらに準決勝では優勝候補の一角だった山梨学院(山梨)を好投手のリレーで破った。手に汗握る接戦の連続のなかでの決勝だけに、アルプススタンドの盛り上がりがすごい。
とくに沖縄ソングの名曲「ハイサイおじさん」がかかると、一挙に攻撃のボルテージが上がっていく。よく知られているように沖縄は遠く費用もかかるので、毎回沖縄代表のブラスバンドは市立尼崎高校の生徒さんたちが友情応援をしてくれている。毎夏やっているだけに、たぶん日本でいちばん「ハイサイおじさん」の演奏がうまいんじゃないかと思う。
「ハイサイおじさん」軽快なリズムと指笛

私がアルプスの「ハイサイおじさん」に初めて出合ったのは、1993年の夏、初めての甲子園取材だった。もう32年も前になる。浦添商のアルプスから聞こえてくる軽快なリズムと指笛に興味を持ち、試合後の応援団に取材に行った。当時はスマートフォンもなければインターネットの一般利用も進んでいなかったので、歌詞は歌っている人にじかに聞くしかない。
高速道路下で帰りのバスを待っている応援団に声をかけて、意外だったのは高校生はみんな歌えない、ということだ。沖縄の方言なので、みんな知っている部分だけ(ハイサイおじさん~とか)歌い、あとはなんとなく声を出して合わせていたという。困っていると、大阪在住の「おばあ」を連れてきてくれた。おばあに歌詞を尋ねると、手をたたきながら歌い出した。
「ハイサイおじさん、ハイサイおじさん~」
必死にメモる。追いつけなくて途中で止めて、メモを取り、また続きをお願いするとおばあは最初から歌い出した。どうもリズムに乗れないと歌えないらしい。そんなやりとりを3回くらい繰り返して、次は「意味」をおばあに尋ねた。が、おばあにすれば歌詞の方言が自分の言葉なので、他に説明のしようがないようだった。「ぬくとら わんに わきらんな」の意味は「ぬくとら わんに わきらんな」でしかない。
また困っていると今度は年配の先生がやってきて、歌詞の内容を説明してくれた。ご存じの方も多いと思うが、酒浸りの男性の歌である。いっとき「高校野球にふさわしくない」と自粛されたようだが、すぐ復権した。当然だと思う。