
自民党の発信は王道でマイルド
一方で、自民党が発信するメッセージや政策は、SNS上で広がっていない。
「要因はいろいろありますが、総じて今の自民党の発信は、王道でマイルド。首相の動向リポートや、政策を順序立てて説明するものが多く、なかなか関心が集まらない。特に今回の参院選では、主な争点が物価高対策となったことで、与党としては財源の問題もあってなかなか踏み込んだことを言えなかったのではないでしょうか。そもそも一般に、与党は責任ある立場ゆえに発信が慎重になりがちで、新興政党に比べるとSNSで注目を集めにくいという構造的な難しさがあります。加えて、石破茂首相の“ネットへの感度”も高いようには見えない。これらの点で、新興政党に比べると発信の工夫がより求められる状況にあります」
山口准教授は、現在躍進している党の代表は共通して、ネットで情報を伝えることへの感度が高いと語る。
「参政党の神谷宗幣代表は、是非は置きますが、『日本をなめるな!』『日本人ファースト』のような力強いキャッチコピーを打ち出すのが得意。さらに、支持者に対してSNSの活用方法や気をつけるべきポイントを指南している投稿もある。支持者のSNS投稿までケアしているというのは興味深い戦略です。国民民主党の玉木雄一郎代表は、YouTubeで積極的に動画の発信をしていますが、特徴的なのはユーチューバー的なサムネイル画像を作っていること。プラットフォームの文化に乗りながら、動画内ではわかりやすく自党が掲げる政策を解説している。演説や有権者との握手など地道な活動の積み重ねのうえに今の人気があることは大前提ですが、両党の代表はネットにおけるコミュニケーションのあり方をしっかり研究している印象です」
対して自民党は、正確に伝えたいという気持ちの表れか、石破首相の話は長く、難解な印象がある。
「もちろん、ただ話を短くすればいいというわけではないのですが、端的にわかりやすい表現を心がけることは、ネット上のコミュニケーションで非常に求められるところです」