足立紳監督と、プロデューサーの妻、晃子さん。ドラマ・劇場版ともに「それでも俺は、妻としたい」の舞台となった都内の自宅で(撮影:写真映像部・山本二葉)
足立紳監督と、プロデューサーの妻、晃子さん。ドラマ・劇場版ともに「それでも俺は、妻としたい」の舞台となった都内の自宅で(撮影:写真映像部・山本二葉)
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 さまざまな価値観が多様化する今、生涯未婚率の増加など結婚に対する価値観も変化している。AERA 2025年8月11日-8月18日合併号では、結婚や夫婦をテーマにした作品を数多く手がける足立紳さん(53)、晃子さん(49)夫妻に「結婚」について聞いた。

【写真】『劇場版 それでも俺は、妻としたい』のワンシーンから

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 収入がある人から結婚していく時代。若者たちは結婚に魅力を見いださず、夫の姓にならない生き方や、あえて「おひとりさま」を選択する女性も増えています。そんな令和の結婚事情を取材してきた本シリーズ。最終回では「それでも俺は、妻としたい」の原作・脚本・監督を手がけた足立紳さん(53)、晃子さん(49)夫妻を訪ねました。「結婚」のひとつの形をお届けします。

紳:結婚かぁ。そんなに真面目に考えたことないなぁ。

晃子:結婚前に数年同棲していまして。彼、全然働かないでずっと家にいて、いつも誰かの悪口言ってて「クズ」だったけど、なんか面白い人だったんです。子どもも産んでみたかったし、けじめをつける形で結婚。言うならば彼は芸人さんでいう相方みたいな感じかなと。こいつと一生一緒にやっていくって腹をくくったらブレなくなりました。

紳:初めて会った時のことをものすごく覚えています。確かまだ大学生で、スタッフルームで美術のお手伝いをしていた。「うわっ。背中のでっかい女がすごい勢いで、のこぎりかけているな」と。その背中に惹かれました。「この分厚い背中が好きなんだ」って冗談で言っちゃった。喜びませんでしたが。

晃子:嫌ですよ、そんなの普通に。ちっとも嬉しくない。

紳:でもその頼もしさ、その大らかさ。彼女がいると現場がぱっと明るくなる感じ。すごく魅力的な子だな、と。僕はこれまでモテるような人生ではなかったけれど当時「凄く素敵だ、素敵だ」って言ってくれて「俺って大丈夫なのかな」って思わせてくれた。

晃子:だから結婚したの?

紳:結婚というか、好きになった。「すごく素敵だ」ってガンガン言ってくれたでしょ。

リスペクトしてるけど

晃子:それは付き合った理由でしょ。結婚の決め手は違うでしょ? 「こいつと一緒にいたら雨風しのげる」でしょ? 私が働いていたから。

紳:あ、うん……。ただ、放送中のテレ朝系ドラマ(「こんばんは、朝山家です。」)でも似たようなことを書いているけど、「この人の人生が変になることはない」「苦しみだけの人生で終わる人じゃない」と凄く思った。

晃子:どういう意味?

紳:乗り越えるというより「苦しみを寄せ付けない人」に見えた。それって相当魅力的な人にしか感じないと思うんだよね。そういうエネルギー、パワーを発していた。

──最高の誉め言葉ですね。

晃子:今初めて聞きました。

紳:なんでよ、何度も言ってるじゃない。

晃子:いやいや聞いていない、言っていない、知らない。

(構成/AERA編集部・大崎百紀)

2025年5月30日~全国公開『劇場版 それでも俺は、妻としたい』 原作:足立紳『それでも俺は、妻としたい』(新潮文庫刊) 脚本・監督:足立紳 (c)「それでも俺は、妻としたい」製作委員会
2025年5月30日~全国公開『劇場版 それでも俺は、妻としたい』 原作:足立紳『それでも俺は、妻としたい』(新潮文庫刊) 脚本・監督:足立紳 (c)「それでも俺は、妻としたい」製作委員会

AERA 2025年8月11日-8月18日合併号より抜粋

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