インターネット上には、住民票の閲覧制限や、親の戸籍から抜ける「分籍」といった方法などが紹介されている。ただ、柴田弁護士によれば、こうした措置をとっても共通の知人などを通して住所が特定されるなどして根本的な解決策にはならない。最も有効な手段は「弁護士への依頼」だという。

 これは、反社会的勢力(反社)への対応策を毒親に応用したもので、不当な要求を続ける反社に「弁護士に任せている」と言い続けることで、反社は最終的にフェードアウトしていく。毒親も同様に、「連絡はすべて弁護士を通して」と通告し、実際に弁護士に対応してもらう。最初のうちこそ親は接触を試みてくるが、やがて手詰まりとなり諦めていくという。

「弁護士が間に入ることで、最終的に親はほぼ100%接触をやめます」(柴田弁護士)

 毒親への対応方法は反社ほど確立されていないが、親による過干渉や支配はDVによる離婚に通じるところが多い。そのため、離婚事件を多く扱う弁護士であれば対応できる可能性が高いという。その際には、「親からの執拗な過干渉に苦しんでいる」「精神的に限界で距離を置きたい」と、具体的な事情や希望を伝えることが重要だと柴田弁護士はアドバイスする。
 

追い詰められる前に

「親との縁を切りたい」。そう考えるのは、冷たい人だと思われるかもしれない。だが、自分を苦しめる相手が、切ろうとしても切れない家族だったとき、距離を置く勇気が必要になる。家族という関係を手放すことが、自分自身を守る最善の選択になることもある。

 柴田弁護士は、こう語る。

「親子である以上、毒親の問題は誰にでも起こり得るものです。深刻化すると、子どもが親を殺害するまで追い詰められることがあります。時間や健康といった人生のリソースが奪われる前に、何らかの対応を取ることを推奨します」

(AERA編集部・野村昌二)

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