AERA 2023年4月24日号より
AERA 2023年4月24日号より

 空き家問題に詳しい大阪経済法科大学教授の米山秀隆さんは、経済学の言葉で「外部不経済」、つまり「社会への悪影響」をもたらすと語る。

「特に都市部は住宅が密集していますから、1軒でも危険な空き家があれば放火の危険性など近隣に悪影響を与えます。空き家が増えていけば地域全体の価値が下がることになり、本来であれば高度に利用できた土地が利用できないとなると、機会損失という問題も生じます」

 マンションの場合は、管理組合が機能していないところは行政も手をつけることができず、放置され、そのまま朽ち果てるところが少なからず出てくると考えられるという。

■京都市が空き家税導入目指す

 野村総合研究所の予測では、38年に空き家率は31・5%にまで上昇する。こうした事態を受け、国は3月、「空家等対策特別措置法」の改正案を閣議決定した。これまでは、建物が立つ土地は住宅用地としての特例が適用され、更地より固定資産税が最大6分の1に減免されていた。空き家の解体費用は、広さや構造などによって変わるが、200万円前後かかる。そのため、解体せず空き家のまま放置しておくケースが少なくなかった。法改正では、窓や壁の一部が壊れている空き家を「管理不全空き家」とし固定資産税の優遇対象から除外して増税し、建て替えを促す。

 だが先の長嶋さんは、効果はあまり期待できないと見る。

「固定資産税の優遇がなくなったところで、せいぜい年に7、8万円。更地にせず、空き家のままで放置しておこうと考える人の方が多いと思います」

 そんな長嶋さんが注目するのが、京都市が独自に導入を目指す「非居住住宅利活用促進税」(空き家税)だ。空き家や別荘など、普段人が住んでいない住宅に課税する。自治体が空き家への課税に乗り出すのは全国初で、3月下旬に政府も同意し26年以降に施行される見通しだ。

「空き家になった時点で税金を課すのが、最も効果があると思います」(長嶋さん)

 前出の米山さんも、京都市の空き家税は効果があるとし、街づくりの観点からこう提言する。

「人口減少時代に合わせ、街をコンパクト化していくことが求められています。そうしてできたコンパクトシティーの中に、長持ちする住宅をつくり、古くなってもリノベーションして人が流入してくる仕組みをつくる。これまでの街を広げながら住宅をつくってきた政策を抜本的に改め、持続可能な街づくりを行っていくことが重要です」

(編集部・野村昌二)

AERA 2023年4月24日号

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