東大合格者数14年連続全国トップ10入り(2025年3月現在)した進学校・渋谷教育学園幕張中学校・高等学校(千葉県)。子どもたちの主体的な学びを支えるポイントの一つが「子どもに委ねる」ということ。その教育方針とは? 教育ライター・佐藤智さんの著書『渋幕だけが知っている「勉強しなさい!」と言わなくても自分から学ぶ子どもになる3つの秘密』(佐藤智著、飛鳥新社)から紹介します。
【図版】「自分から学ぶ子になる」渋幕の“3つの秘密”とは?(全3枚)積極的に失敗させる
積極的に失敗をさせる学校がある、といったらお父さんお母さんはどう感じるでしょうか?
最近では「失敗の大切さ」を伝える方も増えてきたので、なんとなくその価値を理解していただける方もいらっしゃるかもしれません。
一方で、「なるべく失敗させたくない」「失敗するくらいならば先回りしてフォローしたい」と思う親心もあるでしょう。渋幕でも中学1年生の入学時点では、「もっと手厚く」「細かく指示して効率的に学ばせてください」という保護者の方がいらっしゃるといいます。
しかし、そうした保護者に先生はじっくりと向き合って、渋幕の目指す教育を伝え続けます。
渋幕では「積極的に失敗させる」ことを大事にしています。自己決定には失敗がつきものだからです。
例えば、多くの卒業生が忘れられない思い出として挙げるのが、「現地集合・現地解散」の研修旅行です。渋幕では、年度によって多少行き先は異なるものの、主に次のような校外研修(遠足や修学旅行にあたる活動)を設定しています。中1:野田・南房総、中2:鎌倉・北陸、中3:奈良、高1:広島、高2:九州か中国の選択制。
多くの学校では、校庭や最寄りの駅に集合して、全員で現地に向かうでしょう。
しかし、渋幕は生徒が個々に集合場所に向かい、そこからグループごとに現地を巡る。結果、「○○さんが寝坊した」「○班は最終集合時間に間に合わない!」といった“失敗”はよく起きます。しかし、こうしたトラブルをなんとかするのも生徒たち自身。失敗も込みで、自分で決定することを重視しています。
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