山口:あとね、3年ぐらい前にうつ病になって。曲もできないしツアーもキャンセルしちゃったし、人とも会話しないじゃないですか? このままじゃ忘れられちゃうし、自分もどんどんおかしくなるなと思ってYouTube配信を始めたんです。告知も何もせずにいきなりゲリラで始めたんです、自分が正常になるためのリハビリのつもりで。当時は薬の副作用ですごい太ってたし、アップダウンもあったけど、それも含めて全部をさらけ出した。そうすることで気が楽になったし、人と話ができるようになって。配信するためにいろんな道具を用意するじゃないですか? マイクを買ったり、カメラを用意したり、配信のソフトの使い方を覚えたりとか。小さな達成感の積み重ねがうつ病改善に良いって聞いて、実際に配信しながら、それを実感していきました。
百田:そうだったんですね。
山口:その良くなっていくのもみんな一緒に見てくれて、そこからサカナクションに復帰するために歌唱配信を始めて、リアルタイムで生で歌うトレーニングを始めた。それで、そこからソロのツアーをやって、バンドに復帰して、リリースも決まって、タイアップも決まって……という全部の物語を、初期のももクロじゃないですけど、自分のメディアを通じて自分の言葉で話していくことで、生まれた曲の質量みたいなものにも変化が生じてきたなというように感じていて。
百田:繋がってるんですね、物語と音楽が。
山口:そう、密接にリンクしていく時代になったんだなと思う。だから今回、僕らが出した新しい曲も、ぱっと聴いた人と、僕のYouTubeを最初から見てきた人が聴くのとでは、感動の質量が違うというか。
百田:うん。
山口:音楽に人間っていう質量が伴う時代が来たのかなって、最近ちょっと感じています。
(構成/編集部・藤井直樹)
※AERA 2025年6月9日号
※この対談の続きは6月9日発売の「AERA 6月16日号」に掲載します。
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