
政党の生き残りゲーム
とはいえ、選挙対策ではない形での減税の議論は、これからも継続されるべきだと話す。
「やみくもに減税を叫ぶのではなく、財源論もセットで出すべきです。立憲は政府の基金の取り崩しを主張していますが、まだあいまいな部分が残ります。もっと具体的な財源論まで踏み込まなければ国民の納得は得にくいでしょう」
自民党は、森山裕幹事長が「財源を赤字国債で賄うことは破綻への道をたどることになる」などと発言し、財政の健全化を主張することで野党との差別化を図る。財源論に向き合った姿勢と取れなくもないが、伊藤氏は首をかしげる。
「自民党がすぐに『財源がない』と言い出す姿勢には、本当ですかと疑問を抱かざるを得ません。たとえば防衛費増額について振り返ってみても、2023年度から5年間で40兆円超の増額を公表していますが、財源については極めてあいまいで、歳出削減などにもほとんど触れていません。それにもかかわらず、減税の問題になると『財源がない』と騒ぐ。財源を作り出す努力をしようともしないわけです。減税を断るための口実として財源論を持ち出しているようにしか見えません」
アンケートでは「物価高対策について政治に最も期待する対策は何か」も聞いたが、減税や消費税の廃止と答えたのは3割超、給付は約2割だった。国民の多くが切実な声を上げる中、与党である自民党は減税にも給付にも及び腰だ。その理由について、伊藤氏はこう語る。
「仮に減税へとかじを切っても、結局は野党に押し切られたと見られかねない。当初打ち出していた国民一律5万円の現金給付は、野党や世論から強い反発が出て見送った経緯があり、いまさら言い出せない。参院選に向け自民党にはもう打つ手はなく、国民の声よりも“自分たちのメンツ”のために、ただただ野党の要求を突っぱねていくしかないのだと思います」
アンケートでの支持された政党は、自民党の次は公明党(13.2%)、立憲民主党(9.8%)と続くが、「該当なし」と答えた人も9.8%いた。中には、こんな回答もあった。
「期待は何もない。(各政党は)生き残りゲームをしているのでしょう」(岐阜県・60代・女性・パート)
生活苦にある国民のことが本当に見えているのか、私たち有権者にも、各党の主張をしっかりと見極める目が求められている。
(AERA編集部・秦正理)
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