[撮影:蜷川実花/hair & make up 石崎達也/styling 細見佳代/costume ボッテガ・ヴェネタ]
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 3rdアルバム「Circus Funk」を引っ提げて、初のソロツアーに挑む香取慎吾さん。アイドルとしての希望も葛藤も作品に昇華してきた。AERA 2025年5月26日号より。

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──配信版の「Circus Funk」のラスト曲は、「人生はままならないし可もなく不可もない」と歌った「Not Too Good Not Too Bad(feat.Yaffle)」だった。

香取慎吾(以下、香取):Yaffleのスタジオに行って「人生はままならないものだ」ということを含めて僕の他愛のない話をたくさんしました。仮の歌詞があがってきたら僕の話がそのまま書かれていたので、Yaffleに「これは俺の話そのままだから駄目!」と伝えて(笑)。結果、その話のニュアンスが残ったものが完成版です。

ピエロのような存在

──「そんな君も愛してあげよう」というメッセージで同曲は締めくくられる。

香取:曲の中での「君」が自分のことを指していることはよくあります。「そんな君も愛してあげよう」と力強く吐き捨てるかのように書いているということは、自分自身が愛されたいのだと思う。僕は自分のことを「愛されてはいるんだけど、本当には愛されていないピエロのような存在」だと思うことがあります。だからアルバムタイトルにも入っているとおり、サーカスが好きなんです。ただ、自分がピエロだという思いは時代によって変化してきました。

 僕は絵を描きますが、10代20代の頃は「俺なんて大人たちに仕事させられているピエロだ」と思いながらピエロを描き続けていたんです。とてもマイナスな気持ちから生まれているものなので、アイドル・香取慎吾としてはあまり出したくなかったけれど、描かずにはいられなかった。10代20代の頃は経験値が少なく、今ほど強くなかったんでしょうね。でも、ピエロの絵を見てくれた多くの人が「好き」と言ってくれたことで、次第にピエロは絵に出てこなくなりました。そういった心の変化が「Circus Funk」に繋がっています。

 とはいえ、まだ「Not Too Good Not Too Bad」で歌っているような気持ちも残っているかもしれません。“くろうさぎ”という僕が描くキャラクターがいます。ある時期、自宅の部屋の隅っこやソファの陰に、黒い色をした兎が見えて、それを描いたものです。のちのち調べてみたら、自分の念が黒い動物となって現れるという言い伝えがあることを知って。当時の僕はよほど酷い精神状態だったんでしょうね(笑)。くろうさぎは今やぬいぐるみにもなるほどファンの皆さんに愛されるキャラクターになり、笑顔を生む存在になりました。だから僕の中でも最初に見えた時と全く違う存在です。

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