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 コメ高騰を追い風に大手コメ卸の業績が伸びている。これに伴い、株価も右肩上がりだ。専門家は「JA全農の集荷シェアを奪いながら多くのコメを集めたのが勝因」と分析している。

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 昨夏に勃発した「令和の米騒動」は、オイルショック時のトイレットペーパー争奪戦を彷彿させるような混乱を招いた。今なお、米価は高値圏で推移しており、言うまでもなく家計にとって大きな痛手となっている。だが、対照的にコメの高騰が絶好の追い風となっているケースもある。

 ここで、次ページの2つの株価チャートに注目していただきたい。左は東証スタンダード市場に上場している木徳神糧で、右は東証プライム市場のヤマタネだ。どちらも過去10年間の推移を示したもので、ともに足元で驚異的な上昇を遂げている。

価格高騰の追い風で大手コメ卸の業績が大幅上振れ!

 木徳神糧の中核ビジネスは業務用・家庭用の白米や玄米などの卸売りで、4月下旬に同社は2025年12月期の業績予想を上方修正し、純利益が前期比で62.5%増に達する見通しであることを発表した(従来予想は前期比4.5%増)。この業績大幅上振れの背景について、会社側が示した公式見解を要約すると次のようになる。

「2023年産米に続いて2024年産米でも需給の不均衡(需要>供給)が拡大したが、当社は安定的かつ機動的な調達に努めた。取引先との価格交渉を通じ、仕入れ値高騰の転嫁を適時適切に進められた結果、想定を上回る業績拡大が見込まれる」

 一方、ヤマタネは倉庫の準大手として知られるが、コメ卸売りなどの食品部門が売り上げの5割を占めている。同社の2025年3月期決算は5月13日に公表され、営業利益が事前予想(昨年11⽉の公表値)を17%も上回る拡大を遂げた。この好業績を受けて、同事業年度の期末配当予想も上方修正し、年間105円への増配を発表している(前回予想は90円)。

 業績上振れに対するヤマタネの公式見解は、以下のように要約できる。

「コメ卸売りでは需給の逼迫によって調達に苦戦し、販売数量が計画を下回ったものの、販売単価が上昇したことで概ね想定通りの業績となった。2025年2⽉に連結⼦会社を吸収合併したことで⼀時費⽤の計上があったが、コメ卸売りで顧客への安定供給を図りながら差益の確保に努めた結果、営業利益、経常利益、純利益が事前予想を上回った」

 販売数量の未達は販売単価の上昇で補填されて「概ね想定通りの業績」と控えめな評価にとどめつつも、一時費用の計上をカバーしてお釣りが出ている(利益が上方修正されている)。要は、コメの高騰に伴って想定以上に儲かったということだろう。

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