
「水星」代表取締役CEOの龍崎翔子さん(29)は東大在学中に起業、年商10億円のホテル開発・空間プロデュース事業を生み出した。東大で何を学び、何を強みと感じているのか(全2回の2回目/前編から続く)。
【写真】東大卒の女性経緯者が違和感を抱いた「一攫千金」の精神とは
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龍崎さんは2015年に株式会社水星を起業後、日本でもわずかしかない「産後ケアリゾート」や、世界初の宿泊型イマーシブ体験である「泊まれる演劇」などを次々プロデュースしてきた。
こうした発想や実践力は、例えば、毎日のようにツイッター(現X)にかじりつき、どういうコンテンツが求められているのか、消費行動がどのように成り立っているのかをチェックし続けるといった地道な取り組みや、自分自身が抱えている課題に徹底的に向き合って、どうやってビジネスの枠組みの中で解決できるのかを突き詰めるという、自身の中にあるアセットを最大限活用する手法で切り開いてきた。龍崎さんはそうした積み重ねの軌跡を「クリエイティブジャンプ」と名付けている。
「限られた経営資源の中で、あまり強くないカードが並ぶ手札を眺めながら、どうやって次の『キラカード』を切り出すか。一見して逆境に見える状況を、どう乗りこなしていくか。そんな経験を積み重ねる中で、少しずつ磨き上げ体系化した、爆発的な成果を生み出していくための思考のフレームワークです」
「東大ならば、もっといい就職先を」
ブランドの「器」に収まるのを避け、とことん中身で勝負してきたことが、龍崎さんのビジネスの飛躍につながったのは否定しようがない。「東大ならば、もっといい就職先を」という世間の価値観を無意識に受容する東大生ばかりであれば、日本にイノベーションは起きないだろう。
龍崎さんは14年の東大入学時のこんな体験も明かしてくれた。
当時は東大からスタートアップにかかわる学生がぽつぽつ出始めた時期。このため、学内にスタートアップを研究するサークルが発足していた。龍崎さんも興味をそそられたものの、活動内容を知って違和感が募り、結局メンバーには加わらなかったという。