B国パビリオンの階段設置工事の様子。木製の階段に見えるが…

鉄骨製の階段を「時間がない」ため木製に

 4月初めに開幕前の万博会場の取材に訪れると、B国のパビリオンは高所作業車も出動して、工事の真っただ中だった。

「パビリオンの中にはレストランがあります。当初、万博協会が用意した都市ガスを使用する予定でしたが、プロパンガスのパワーがないと無理だとわかり急遽、変更した。開幕直前に床をはがして、ガス管もプロパンガス仕様に取り換えるなど、大変でした。ただ、もっと大きな問題がある」(A社長)

 4月初めに記者が見たとき、B国パビリオンでは館内に入る階段を設置していた。そのとき撮影した写真を見ると、階段は明らかに木製に見える。

「実は、鉄骨製の階段を設置予定で、そのための材料も仕入れました。しかし、B国の担当者から、『時間がないので木製で対応してくれ』とオーダーがあった。一般的に、図面や建築申請から、鉄骨製を木製に変更すると検査が通りません。それにパビリオンにはたくさんの来場者があるので、木製だと強度面からも支障があります。ただ、施主の依頼なので、仕方なく木製の階段を設置しました。よくこれで許可がおりたなと思います」

 A社長の話を聞いた後、B国のパビリオンに行き階段を確認したが、鉄骨製には見えなかった。

 B国パビリオンが鉄骨製で予定していた階段を木製にしたという話について、パビリオン建設の許認可を担当する大阪市の建築確認課に聞くと、こう答えた。

「B国からは民間の建築確認機関から申請通り完成したという検査済証が出されている。ただ今回、階段について疑義があるという取材を受けたので調べたい」

 建築エコノミストの森山高至氏に話を聞くと、こう話した。

「鉄骨製の階段を木製に変更したというのは、建物全体の強度にもかかわる重大な問題。本当ならば、検査を通って許可がおりたとは信じがたい」

国家的イベントなので工事を続けたのに…

 B国パビリオンは開幕直前に完成した。A社長によると、急な仕様変更などに対応し、追加工事もして開幕に間に合わせた結果、工事代金は契約金額より1億円以上膨れ上がり、6億円超となったという。だが、現在までC社から支払われたのは1億5千万円ほど。4億円以上が未払いだという。また、1億円超の契約だった別のヨーロッパの国のパビリオン工事でも、数千万円の支払いがされていないという。

「C社は当初契約した4億円超の金額以上は払わないと言っていますが、こちらは自前で通訳も入れて、『追加工事は別に請求』と何度も確認をして6億円超になっている。実は、途中でも支払いが遅れたので何度か工事をストップしようと思いましたが、万博という国家的イベントなので、無理をして間に合うように完成させた。トラブルになっても国際博覧会(万博)協会や建設関連の業界団体がなんとか対応してくれると思ったから。しかし、協会に連絡してもたらい回しで話になりませんわ」

 A社長はこう言って、途方に暮れた様子だった。

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