国が威信をかけて誘致した万博の開催場所は…

 2025年4月〜10月、この場所を舞台に2025年日本国際博覧会協会(万博協会)の主催で2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)が開かれる。1970年の日本万国博覧会(大阪万博)の再来を期して、大阪維新の会が発案した。国が威信をかけて誘致した一大イベントである。

 「この辺りは埋め立て地で、もともと何もないところやから。この工事で職人さんがいっぱい来るようになった」

 こう教えてくれたのは、セブン‐イレブンの喫煙スペースで一服していた建設作業員。髪を短く刈り込み、よく日焼けした50代と思しい男性で、ファン付きの空調服を着ていた。

 島で建設工事に当たる作業員は、日に3000人とされる。マイカー通勤を認められず、その多くが島外から工事関係者だけを輸送する専用バスに乗り込む。

 「職人さんが乗るバスが出るところにもコンビニがあって、そこなんか朝から食べ物が売り切れて、棚が空やからね」(建設作業員)

沈むことが約束された土地

 埋め立てで生まれた何もない島。できたら訪れようくらいの軽いノリを、その土を踏まなければという決意に変えたのは、事情をよく知る関西の経済人から言われた次の言葉だった。

 「あの島は確実に沈んでいくし、いつまたガス爆発するかもしれない。大阪の土木の関係者は、みんな知っている。ゴミを埋め立てていて、地盤が固まっていない」

 その言葉は果たして本当なのか。

 島が将来、地盤沈下する可能性について建設作業員の男性に問うたところ、当たり前といった感じで頷いた。

 「関空の方は、地下にジャッキが付けてあるから、沈んだら上げれるけど、こっちはジャッキは付いとらんからね」

 埋め立て地なので、地盤が沈むのは仕方がない。同じ埋め立て地でも、関西国際空港は建物が地盤沈下しても歪まないよう、対策が講じてある。できて間もない埋め立て地は、しばらく沈下を続けるのが普通だからだ。

 旅客ターミナルの柱の下部には、重量物を持ち上げられるジャッキが付いている。建物に傾きが生じた場合、「ジャッキアップ」といって、ジャッキで柱を持ち上げ、柱と基礎の間にできたわずかな隙間に鉄板を挟み込んで歪みを抑える。

 対して万博会場の建物は、空港ほどの対策は取っていない。沈むに任せるか、建設後に無理やり柱を持ち上げて何とかするしかないという。

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