
2024年に起きた工事中の爆発事故
夢洲が軟弱地盤であることは公然の事実。一部では豆腐状とまで揶揄されている。建設作業員は、半年前に起きた爆発事故を知ってはいたが、原因に詳しくなかった。
「なんかいろいろ溜まってたガスに引火したんと違うかな」
万博の明るい雰囲気を打ち砕くその事故は、2024年3月28日午前10時55分ごろに起きていた。ボンッという音をあげて、万博会場のトイレの建設現場が爆発したのだ。
報道や万博協会の報告によると、溶接作業の火花が床下に溜まったメタンガスに引火し、大きな破裂音が響き渡ったという。厚みが18センチあるコンクリート製の床が、6メートルにわたってめくれ上がり、床下を点検するための金属製の蓋が歪んだ。床や天井など100平方メートルを損傷した。当時4人が作業していたものの、幸いけが人は出なかった。
メタンガスは、有機物の腐敗や発酵で生じる可燃性のガスだ。都市ガスの原料になったり、発電に使われたりする。現場は建設中のトイレ棟である。誰も使っていないトイレ棟でメタンガスが生じたのは、夢洲が大阪市のゴミを受け入れる最終処分場だからだ。
爆発事故が起きたとき、万博協会は「他のエリアでは可燃性ガスの発生はない」と言い切り、トイレ棟のあったエリアだけ1カ月弱、火気を伴う工事を中止した。
ところがその後、他の工区でもメタンガスが検出され、先の断定は覆される。島内はどこで可燃性ガスが湧くか分からない。だから対策のしようがない。建設作業員はこう匙を投げていたのかもしれない。
現役の最終処分場は「ウンコの島」
夢洲は、隣接する二つの人工島・咲洲(さきしま)、舞洲(まいしま)とともに1991年、「夢、咲き、舞う」との期待を込め、命名された。ここはその原料からすると、「ゴミの島」であり、「ウンコの島」でもある。市民が出すゴミや、下水を処理する過程で出てくる泥状の下水汚泥、その焼却灰が半世紀にわたって投じられてきたからだ。
大阪市は高度経済成長期の1970年代から、廃棄物の最終処分場として海面の埋め立てを始めた。島の一部は、万博が終われば再び廃棄物を受け入れるとみられる。
何が埋まっているかは、島を造った大阪市も正確には把握しきれていない。大阪市の総合企業誘致・立地支援サイト「INVEST OSAKA」は、埋設物を書き連ねていては差し支えがあるのか、〈大阪ベイエリアに位置する夢洲は、市内で発生した建設土砂等を利用して作られた約390haの人工島です〉とお茶を濁している。
その「等」が地中で腐敗し発酵して、メタンガスとなって工事の最中に湧き出してきた。
埋め立て地の有機物が分解されて生じる「埋立ガス」が排水管を通すための地下空間に溜まり、そこに火花が落ちて引火、爆発した――。万博協会はこうみている。