爆発の危険性があるスリリングな会場
万博の工事では、事故の前から爆発の危険性が認識されていた。作業を開始する前にガスの濃度を測定していたものの、このときは1階での作業で、地下のガス濃度まで測っていなかった。
事故を受けて、万博協会は、ガスが滞留する可能性がある場所で濃度の測定を徹底し、基準を超えた場合は換気をすると決めた。会場内に換気装置を増やし、可燃性のガスの濃度を毎日測定して公表し、来場者の不安を払拭するそうだ。
裏を返せば、万博会場はいつどこにメタンガスが湧いてきて滞留するか、予測できないということになる。さらに、地盤沈下や、液状化、災害時に来場者が孤立する恐れまで指摘されている。平和の象徴とされる万博会場がこれほどスリリングだったことが、かつてあっただろうか。
下水汚泥の最終処分場としての夢洲には、トイレに流したもののたどり着く先として、俄然興味が湧く。万博向けに島内が美化されてしまう前に、むき出しの状態の島を見ておきたいと思った。
訪れたそこは、想像以上に広漠とし、矛盾を抱えていた。本来、資源として使える膨大な量のウンコが地中に押し込められている。栄養やエネルギーの源になったはずのものが腐敗し、発酵して、時ならず湧き上がってくる。人工物でありながら、時おり野生化して牙をむく。そんな埋め立て地に、万博協会や建設作業員が、振り回されていた。
「地雷原」もあながち誇張ではない
ウンコ、それを流した下水、それを処理する過程で生じ、夢洲に埋まっている下水汚泥……。いずれも爆発の危険が伴う。
ウンコに含まれるカロリーは、口から摂る食事に比べて低くなる。人間が消化の過程でカロリーを吸収してしまうからだ。それでも、塵も積もれば山となるで、濃縮が進むと爆発も起きる。
下水汚泥は、そのまま肥料にできるほど養分を豊富に含む。燃やして石炭の代わりに火力発電に使ったり、下水汚泥からメタンガスを抽出して都市ガスや車の燃料にしたりと、エネルギー源として見直されているくらいだ。人糞ではないものの、牛糞由来の液化バイオメタンは、ロケットを飛ばせると期待されている。
下水汚泥やゴミを散々投入してきた夢洲で、可燃性のガスが湧き、運が悪いと引火してしまう。これは自然の道理である。都市住民は、自分の生活の領域からできるだけ遠くへとゴミや汚物を押しやってきた。その一つが夢洲だった。地雷原だなんて揶揄されるけれども、埋め立て地とはそういうもの。
だからかどうかは知らないが、万博会場は会期中、全面禁煙と定められた。規則違反のペナルティは、罰金ではなく爆発かもしれない。
(ジャーナリスト:山口 亮子)
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