
「年齢を重ね、自身は変化していると思うか」と尋ねると、「いや、全然」と即答するSUPER EIGHT村上信五さん。キャラクターも話し方も、基本的に10代の頃から変わっていない、と分析する。そんな村上さんの初の著書『半分論』は、いかにして生まれたのか。AERA 2025年5月19日号より。
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思考が整理されていて、シャープで重厚感のある文体──。村上信五の初の著書『半分論』を手に取ったとき、そんな感想を抱いた。取材では、バラエティー番組のMCとして目にする村上と何ら変わらない、心地よいトークが繰り広げられる。だが、その文章からは村上が読んできた本、出会ってきた人々の存在の大きさや豊かさを想像することができた。
「これまで読んできた本ってこんな感じだったかな、こうやって書いたら伝わりやすいかな、と考えながら、誰にも相談せず、ひとしきり書いていきました。文字通り、『独学』ですね。知っている言葉しか使っていないですし、知らない言葉をわざわざ調べて使う、ということもなかった。知っていることを羅列する感覚で、ひたすら書き進めていきました」
幼い頃に読んでいたのは「ズッコケ三人組」シリーズ。読書感想文は「無理やり読んで絞り出さなければいけない感じ」が好きになれず、得意ではなかった。20代になると、裏社会を描いた作品やノンフィクションを経て、“歴史もの”全般が好きになり、新幹線や飛行機での移動時間を使い、読み漁ったという。
なかでも大きかったのは、番組で共演を重ねてきたビートたけしさんとの出会いだったという。30代半ばのこと。1千ページを超える大作『虚数の情緒』(吉田武著)を薦められた。
「数学や科学といったものはまったくもって苦手でしたが、薦められたことで興味を持ち、それからは理系含めオールジャンルを読むようになったんです」
『半分論』は、サウンドチェックから本番までの間や地方でのライブの後など、隙間の時間を縫うようにして書き上げたという。
機転の利くトークと人を惹きつける強さは、きっとこのしなやかな好奇心と、類いまれな行動力に支えられている。
(ライター・古谷ゆう子)

※AERA 2025年5月19日号
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