
SUPER EIGHTの丸山隆平が、8年ぶりに主演を務める映画「金子差入店」が5月16日に公開される。自分の人生を振り返って丸山自身が見つけた「見せたい美しいもの」とは。AERA 2025年5月5日-5月12日合併号より。
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「そう! 僕もです。僕も、自分の顔、こんななってたんや、って」
鋭い怒りを爆発させる顔、昏い眼差し──見たことのない表情に、丸山隆平ではなく、「金子真司」にしか思えなかった。と伝えると、丸山はそう言って、周囲を温かくするようないつもの笑みを見せた。
俳優として相当の覚悟で
8年ぶりの主演映画「金子差入店」で演じるのは、刑務所や拘置所に収容された人々への差し入れを代行する「差入店」の店主。設定だけでも難役であることが窺える。
「差入屋という職業自体に馴染みがなかったのですが、脚本を読ませていただいたら、とても大切な社会的役割を果たしている職業で。きれいごとだけではなく、世間からどのように見られているか、家族にどういう影響が及ぶのかといった面に目を背けない、地に足のついた筆(ふで)[筆致]で、そこにすごく動かされた。俳優としてハードルが高いことを求められていることも嬉しかったし、チームに入れようとしてくださったことも嬉しかったので、オファーを受けました。相当、覚悟で」
監督は、本作が長編映画デビューとなる古川豪で、11年かけて完成させたオリジナル脚本だ。丸山は監督と何度も会い、個人的な生い立ちの話も重ねて役作りをしたという。
「作品のために真剣に話すというよりは、お互いのパーソナルな話を、食事の席、飲みの席で重ねることがあったのが、僕の役にとってすごくいい栄養分だった、っていう結果論なんですけどね。僕は舞台のときもわりと、作・演出される方とは何度もご飯とかプライベートの時間を重ねて、その人の“具材”を知る、というか。今回は、物語の芯の部分に、古川さんの出生や、出会ってきた人の話を聞くことで、実感のある、体感と質感みたいなものがのりました」
「自分を制御できない」、キレて暴れることもある金子は、穏やかな丸山とは真逆に思えるが、どう演じたのだろうか。
「いや、僕にも、ある部分ではありますよ。わかんないですよ、人間なんて。どこで暴発するかわかんないし、だから犯罪って起きると思うし。人によって沸点は違うでしょうけど、それぞれ怒りのスイッチ、ってあると思うんですよ。金子の場合は、父として、なので、たしかに自分のなかにはないところではあるけど、でも、大事な人はいますから。そういう意味では、感情を引き出しながらやりました。