「エロ広告」について切り込んだ伊藤孝恵参議院議員(3月18日、参院インターネット審議中継から)

 私は性の仕事をずっと続けている。だからというわけではないが、「エロ(ス)」(スが入るか入らないかはとても大切だなぁ)というものが、私たちの心を時に癒やし、豊かにし、自由にすることも知っている。とはいえ、私の信じている「エロ(ス)」と、伊藤議員がいう「エロ広告」の「エロ」の分岐点を説明せよ、と言われたとき、万人に納得できる説明をする自信は私にはない。「エロ」はキモくて、コワくて、自分の尊厳を奪われるように感じ、つらくて、怒りしかわかない……という私の「感覚」は、この社会を女として生きてきた経験から生まれる実感だからだ。わからない人には、きっと、わからないでしょう?

 で、こういうときに、国会という場で、議員という立場を最大限に活用し、「エロ」を連発できる強さと勢いをもつ伊藤議員のような存在は貴重なのだ。うじうじと「エロに困っているということを発信することに困っていることに困っている」などとややこしく悩まずに、伊藤議員は明確にこう言ってくれるのだから。

「性的同意のない性行為、性的児童虐待コンテンツを広告にするなど許すまじ!」

 許すまじ! である。「許すまじ」と声に出して言ってみてください。なんだかとても強くなれる気がしませんか? 許すまじ! ああなんてこれ以上ないほどの明快さなのであろう。エロにもいろいろグラデーションがあって……など悩む必要はなく、性的同意のない性行為=性暴力、性虐待、児童虐待を娯楽にすることはダメ、ならぬものはならぬ、と明確にある意味乱暴に言い切る力というのも、必要なのだということを伊藤議員は、議員としての大切な立ち場から言ってくれたのだ。そして、「恥を知れ!」発言で有名な三原大臣との華麗なるコラボ。許すまじ! 恥を知れ! ふたりの女性議員によって、もしかしたらネット上のダダ漏れの「エロカルチャー」が少し変わるのではないかと、私は期待したい。

……と清々しい思いで国会を見ていたのであるが、やっぱり、男ってチキンですよね。と、乱暴に男女で分けさせてもらうが、せっかく伊藤議員が「許すまじ!」と刀を抜いてくれたのに、当の国民民主党の玉木雄一郎代表がひるんでしまったのであった。

 エロ広告を規制する=表現の自由を規制するのか!? というネット民たちの強い声に、玉木代表はX上で慌ててこう打ち消した。

「エロ広告を法規制する?そんなことは言っていないので、ご安心ください。 国民民主党は表現の自由を守ります」(3月22日)と無駄にキリッ!と、「エロ」ファンたちにエールを送ったり、「『エロ広告』『エロ広告』と国会で果敢に連呼する伊藤たかえ議員に敬意を表しつつ、たらい回しに終始する各省庁の対応に唖然としつつ、表現の自由は重視しつつも何らかの対応が不可欠だと確信した質疑でした」(3月19日)といった歯切れの悪い投稿をする。だいたい伊藤議員が「エロ広告」と連呼したことに敬意を表する……って意味がわかりません。

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