一方、背中に近い下行大動脈に解離が起こる「スタンフォードB型」は、すぐには破裂しない傾向があるので、血圧を下げる治療を行うことが多いそうだ。

 山田さんの場合、幸いにもスタンフォードB型だったため、ただちに命に関わることがなく、経過観察となった。

 ただその場合でも、経過観察中に破裂のおそれが出てきたら、手術を行うことになる(実際、山田さんはそうだった)が、近年、大動脈解離の計画手術(緊急手術ではなく、予定された手術)は、医療の進歩によって、だいぶ安全に行えるようになったと、菊池医師は言う。

血圧は大動脈解離の最大の要因

 いずれにせよ、一度発症したら再び血圧が高くならないよう、徹底的にコントロールする必要がある。

「普段から血圧を測って管理し、必ず治療を続けてください。それからトイレで強くいきんだり、暖かい場所から急に寒い場所に行ったりすると血圧が上がりやすいので、十分に気をつけましょう」(菊池医師)

 なお遺伝が関わっていることから、家族に大動脈解離を発症した人がいる場合も、大動脈解離には注意が必要だ。

 過度の飲酒をせず、喫煙や暴飲暴食をやめ、便通がよくなるようバランスのよい食事をとり、適正体重をキープし、適度な運動をし、規則正しい毎日を送る……普段から適切な生活習慣を送ることが大切だろう。

(菊池大和 : きくち総合診療クリニック / 大西まお : 編集者・ライター)

▼▼▼AERA最新号はこちら▼▼▼