南彰さん(みなみ・あきら)/琉球新報記者・編集委員。2023年10月、朝日新聞社を退職し、11月から琉球新報で現職。著書に『政治部不信──権力とメディアの関係を問い直す』『絶望からの新聞論』など
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 メディアに対する不信感が高まる中、どのような報道であれば信頼を取り戻せるのか、生き残ることができるのか。『持続可能なメディア』を上梓した下山進氏と、元朝日新聞記者で琉球新報の南彰氏が語り合った。AERA 2025年3月17日号より。

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持続可能なメディアの条件はなにか。対談の前編はこちら。

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下山:全国紙は、図体も大きく、類似紙がいくつもあり、「持続可能」となるのは相当に難しいのですが、私は、地方紙はそこでしか読めないものに特化して、届け方を誤らなければ、可能性はあると思っています。

南:その意味で下山さんの本を読んで刺激を受けたのは、鳥取西部のケーブルテレビ局「中海テレビ放送」です。

 100万円ずつ地元の170の企業や個人が出資して1989年に始まったこのケーブルテレビ局は、2022年の決算までずっと増収を続けている、と。生活に密着しながら、市民の様々な課題を解決するという報道を軸に信頼を勝ち得ています。経営の中心にエンジニアがいて、インターネットプロバイダ事業や、電力事業を組み合わせ、人口減少県の鳥取で、持続可能なメディアを実現しています。

 開局の時から、鳥取西部のニュースを届けるニュース専門チャンネルをつくっているとのこと。地上波のローカル局が、ほとんどキー局や準キー局の番組を流すことしかできていない中、地方のメディアの生き方として大事なヒントが詰まっていると思いました。

下山:あとで人を紹介しますので、ぜひ現地で視察してみてください。

南:ありがとうございます。私は朝日を脱藩するにあたり、重心を低くすることが大事だと思いました。ジャーナリズムはかくあるべしという論ではなく、人々の生活の中に入っていく。

下山:「持続可能なメディア」の条件その6として「重心を低く」ですか、いいですね。

 南さんが琉球新報で取り組まれた「歩く民主主義 100の声」は、南さんらしいいい企画ですね。米軍普天間飛行場(宜野湾市)を名護市辺野古に移すことの賛否について、宜野湾市の市民100人に、南さんが聞いていくというものです。

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