
保守派に阻まれ続けてきた選択的夫婦別姓の導入。だが昨年、ビジネス界の女性たちのパワーによって経団連が賛成に回った。今度こそ。後半国会に注目が集まる。AERA 2025年3月10日号より。
【今度こそ実現なるか!】選択的夫婦別姓をめぐる今までの歴史 第1波~第4波まで





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2月12日。自民党の「氏制度のあり方に関する検討ワーキングチーム(WT)」がそろりと再開した。参加者は約50人。高市早苗前経済安全保障相や衛藤晟一元少子化対策担当相らやや保守派が多めな陣容で、初回は日本の戸籍制度について学び、意見を交わした。かつてのように怒鳴り声が廊下に響くでもなく穏やかに終了。その後も週1回のペースで議論を重ねている。
党内に強い反対派を抱え、選択的夫婦別姓の議論を避けてきた自民党が、やむをえずWTを再開したのは、昨秋の衆院選で自民・公明が少数与党に転落したためだ。衆院では別姓に前向きな野党が議席を多く獲得。特に最大野党の立憲民主党が選択的別姓導入をにらみ、法案審議の舞台となる法務委員長ポストをおさえた。かつて国会に出した「野党5党案」をベースに他党も巻き込んで後半国会に法案を提出し、審議に持ち込む構えだ。その対応を迫られている。
選択的別姓は、日本における長年のジェンダー課題である。
「実現するかもしれないという機運が高まってくると、保守派がものすごい反対運動を展開してつぶしにかかる。もう30年、この繰り返しです」
4度目の大きな「波」
1990年代から導入をめざして活動する「mネット・民法改正情報ネットワーク」の坂本洋子理事長はそう話す。もしかしたら実現するかも──。そんな波は、今回で4度目だという。
最初の波は96年、法相の諮問機関である法制審議会が選択的夫婦別姓の導入を盛り込んだ答申を出した時だ。国際的な潮流を背景に、91年に民法学者らによる議論が始まって、5年かけて結論を出した。答申を受けて政府は民法改正案も準備し、国会に提出する一歩手前だったが、自民党の保守派に阻まれた。
次の山場は2000年代初め、自民党議員有志による「例外的に夫婦の別姓を実現させる会」(笹川尭会長)の動きだ。顧問には幹事長を務めた野中広務、古賀誠両氏ら実力者が名を連ね、家裁の許可を得て例外的に別姓を名乗る「例外的夫婦別姓」を目指したが、実現しなかった。
3度目の波は、民主党に政権交代した後の10年。当時の千葉景子法相が政府法案を準備したが、民主党内でも反対派が増え、閣内にも反対があり提出できなかった。12年に自民党が政権に返り咲くと、伝統的家族観を重視する安倍晋三政権のもとで7年8カ月、別姓は「封印」された。