
仮に日本企業がアメリカ並みのAIサービスを提供できるようになったとしても、その運用には大量の電力を必要とする。日本はエネルギー自給率が低く、化石燃料やLNG(液化天然ガス)を海外から買い続けるしかない。
つまり、米国製AIを利用すればデジタル赤字が拡大し、日本発のAIを利用しても輸入エネルギーへの依存で支払いが増す──結局、海外への支出が避けられない構造は変わらなさそうだ。
そう考えると、AIが普及して利便性が高まるほど、貿易赤字や円安リスクが大きくなる懸念がある。物価高がさらに進めば、私たちの生活への打撃も無視できない。
これらを解消するには、エネルギー自給率の向上が不可欠だろう。再生可能エネルギーの拡充などに本腰を入れて取り組まないと、AI利用の拡大がそのまま経済的な負担増につながりかねない。
AIの進化は、人手不足にあえぐ日本にとって大きな救いのように見える。だが、便利なサービスをただ享受するだけではなく、その裏で起きている電力問題や国際収支のリスクにも、目を向ける時期に来ているのではないだろうか。
これからの日本が、AI時代を迎える上で避けて通れない課題だと強く感じる。
※AERA 2025年3月10日号

