たうち・まなぶ◆1978年生まれ。ゴールドマン・サックス証券を経て社会的金融教育家として講演や執筆活動を行う。著書に『きみのお金は誰のため』、高校の社会科教科書『公共』(共著)など

 仮に日本企業がアメリカ並みのAIサービスを提供できるようになったとしても、その運用には大量の電力を必要とする。日本はエネルギー自給率が低く、化石燃料やLNG(液化天然ガス)を海外から買い続けるしかない。

 つまり、米国製AIを利用すればデジタル赤字が拡大し、日本発のAIを利用しても輸入エネルギーへの依存で支払いが増す──結局、海外への支出が避けられない構造は変わらなさそうだ。

 そう考えると、AIが普及して利便性が高まるほど、貿易赤字や円安リスクが大きくなる懸念がある。物価高がさらに進めば、私たちの生活への打撃も無視できない。

 これらを解消するには、エネルギー自給率の向上が不可欠だろう。再生可能エネルギーの拡充などに本腰を入れて取り組まないと、AI利用の拡大がそのまま経済的な負担増につながりかねない。

 AIの進化は、人手不足にあえぐ日本にとって大きな救いのように見える。だが、便利なサービスをただ享受するだけではなく、その裏で起きている電力問題や国際収支のリスクにも、目を向ける時期に来ているのではないだろうか。

 これからの日本が、AI時代を迎える上で避けて通れない課題だと強く感じる。

AERA 2025年3月10日号

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