AERA 2025年3月10日号より
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 物価高や円安、金利など、刻々と変わる私たちの経済環境。この連載では、お金に縛られすぎず、日々の暮らしの“味方”になれるような、経済の新たな“見方”を示します。 AERA 2025年3月10日号より。

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 ChatGPTを使い始めて、1年が経った。当初は月額20ドルにすら「高いな……」と躊躇していたのに、今では月200ドルのプランを迷わず契約している自分がいる。もし将来2千ドルになったとしても、「人を雇うより安いかも」と自分に言い聞かせて使い続ける気がする。それほどAI(人工知能)の便利さにとりつかれてしまっている。

 ただ、気になるのは日本がAIの開発でアメリカに大きく後れをとっていることだ。これからAIがさまざまな分野で活用されれば、その分だけ海外企業に利用料を支払う事態が増える。

 実際、2024年の国際収支を見てみると、デジタル分野の赤字が6.6兆円と過去最大を更新し続けている。検索サービスや動画配信、クラウドなど、すでに多くのデジタルサービスを海外に依存しているが、これからはChatGPTのようなAIサービスへの依存も高まっていくことだろう。

 日本では人手不足が深刻化しているため、今後ますますAIに頼らざるを得なくなるだろう。だが、このまま海外勢にリードされ続ければ、利用料がある日突然、2千ドルに値上がりしても黙って受け入れるしかない。

 先日、ソフトバンクグループがChatGPTを開発している米OpenAIとの合弁会社を設立することを発表した。出資比率は50%ずつになるそうだ。こうした国内企業の資本が入ることは、デジタル赤字の拡大を食い止める点でも重要なことだ。

 一方、イーロン・マスク氏がOpenAIを買収し完全非営利な団体に戻そうとしているという話もある。もし仮に、日本企業がそのAI技術を無償で使えるようになったらどうなるか。

 そこで浮上するのが電気代の問題だ。ChatGPTのような大規模AIの運用には膨大なサーバーを動かす電力が不可欠とされる。実際、ユーザーからの課金の多くが電気代に充てられているともいわれている。

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