アイスショーの「スターズ・オン・アイス」は3月30日、大阪公演で始まり、全国3カ所計10公演が行われた。羽生結弦さんは自身が「封印してきたプログラム」と話す「オペラ座の怪人」を初日に披露した。AERA 2023年4月24日号の記事を紹介する。
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大阪の初日公演のオープニングは、羽生結弦さん(28)がリンクに伏せているシーンから。ゆっくりと顔を上げて滑り始めると、美しいトレースを氷上に描き、華麗にショーをスタートさせた。
羽生さんのソロナンバーは、第2幕の最後。3月の世界選手権(さいたま市)の金メダリストによる演技の後、大トリでの登場となった。暗闇のなかで「オペラ座の怪人」の音楽が鳴り響く。羽生さんの2014~15年シーズンのフリープログラムである。今年2月の東京ドーム公演まで、8年間一度も演じなかった名プログラムを、この頻度で再演する意味とは何だろうか。観客席からは、この日一番の拍手とざわめきが起きた。
「この『オペラ座の怪人』は、(グランプリシリーズの)中国杯での衝突事故や、病気やけがなどにすごく苦しんだシーズンだったので、長い期間、自分で『もう滑らない』と決めて封印してきたプログラムでした」
■あえて再演する理由
羽生さんが語る通り、このシーズンの苦難は計り知れないものがあった。中国杯での衝突事故、そして全日本選手権の直後に開腹手術、さらに練習再開後の捻挫など、いくつもの壁を乗り越えた。全日本選手権で3連覇した後には「壁を越えた先には壁がありました。でも、僕は人一倍欲深いから、課題ができたらそれを越えようとします」と話し、不屈の精神を示したシーズンでもあった。
その「オペラ座の怪人」をあえて再演する理由を、羽生さんはこう打ち明けた。
「封印して以来、(2月の)東京ドーム公演で初めて滑った後、『もっと完成させたものを、体力のあるしっかり滑りきれる状態でみなさんに届けたい』と思って、今日滑ることにしました。この大阪の会場では、衝突事故のすぐ後のNHK杯で滑っていて、あの時は事故の影響も少なからずあってうまく滑れませんでした。そういった意味でも『この会場で良い演技ができたらいいな』という思いを込めて滑っています」