「もともと、ゴールデンウイークやお盆休みの後は、依頼の件数は多い傾向にありましたが、今回は特に多いです。12月末の時点ですでに『1月6日に会社を辞めたい』と“予約”をする依頼が80件ありました。パワハラなどを受けているという理由もありましたし、会社の制度や今後のキャリアを休みの間に振り返って『年明けからこの会社に行って働きたくない』と思う方も増えているようです」

 こうした動きについて、働き方評論家で千葉商科大准教授の常見陽平氏は、「長すぎる休みが労働者のアクションを活発化させている」と分析する。

「そもそも、今回の年末年始は最大で9連休という、ビジネスパーソンにとって仕事を忘れるには十分な期間があったと同時に、仕事を見つめなおす時期でもありました。会社に対しての不満や、職場環境に対しての嫌悪などを感じなくてもよい時間を過ごすと、もう一度その嫌悪感に対峙するハードルが上がるのは必然でしょう」

年始ならでは?

 長い休みの後に職場へ戻ることを考えると、憂鬱な気分になることは誰でもあるものだろう。

 それが退職願望へとつながることも十分にあり得るのだろうが、従来の夏休みやゴールデンウイーク明けと比べ、今年の年始が異常なほど多かったのはなぜだろうか。

 常見氏は「年末年始ならではの休みの特徴」と「退職代行の知名度が上がったこと」を理由にあげる。

「年末年始は、普段会わない家族や親戚、知人らと会う時期でもあります。多くの人の意見や体験談などに触れることで、それまで会社で許容していたことでも疑問や不満が生まれてくることもあるでしょう。若者だけではなく、社会人歴が長い50代・60代の人でも同じように考え、行動することはあると思います」

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知名度上がった退職代行