組織を超えた横のつながりを感じた
トイレの横の掲示板には、いつも労組の貼り紙があり、古めかしい字体で、ゲキを飛ばすような文体のメッセージが綴られていた。あるとき、労組内の会議で、こう伝えてみた。「(貼り紙の)あの見た目で『怖い、風変わりだ』って思っている人たちもいる。配られても読まない。昔ながらのスタイルをやめて、イメージを変えましょう」
まずは、一般的なお知らせのように、読みやすいフォントに変えること。赤・青・黒に「!」を多用する従来の怒りのスタイルから、イラストも入るなど親しみやすいビジュアルにするよう提案した。「ちょっとの工夫で、印象が変わる。労組の紙と気づかずにうっかり読んじゃう人を増やしましょう」。そう呼びかけた。日本の放送局では1960〜70年代に激しい労使対立の歴史がある。それを継承する伝統的なスタイルの変更に、意外にも強い難色を示す人はいなかった。
小島さんは、労組の機能が重要だからこそ、今も思う。「労働組合にマイナスイメージを持つ人も少なくないのは、知識不足に加えてコミュニケーションがうまくいっていないからでは。昭和感のある労組のスタイルは、敬遠されがち。裾野を広げるために、フォントを変えるところからでも始められる」。
その後、会社を辞めてフリーランスになり、当初はTBSの関連会社の所属タレントとして専属契約を結んだ。その後、大手芸能事務所を経て、現在は個人事務所で活動している。日本でフリーランスとして働く人々には、職能団体などの声をあげる仕組みが十分にあるわけではない。搾取される人を減らすためにも、労働条件を交渉できる場が必要だと痛感している。「御用組合」と揶揄される日本の労組だが、会社員だった頃、組織を超えた横のつながりの意味を感じた。
「社風によっては、組合活動をやっている人は、変わり者扱いされることもあるかもしれない。わたしたちの労組は日本民間放送労働組合連合会(民放労連)に加盟していたが、労組間の横断的なつながりがあると、課題を共有する仲間に出会えるし、学びも多い」。社員と違い、フリーランスは職を失うリスクが高く、立場も弱い。働く人の横のつながりがあれば、自身を守る術も増える。