2011年3月11日に東日本大震災に遭遇した宮城県仙台市在住のイラストレーター・アベナオミさん。自身の被災体験をコミックエッセイにまとめるにあたり、「正しい知識を伝えたい」と防災士の資格も取得しました。子どもたちは今、中3・小3・年長になり、改めて子どもの命を守るための防災についても考えているというアベさん。いつどこで大地震が発生しても不思議はない日本。わが子の命を守るためにできる準備について教えてもらいました。※備え編<いますぐやるべき大災害への備え、「最低限これだけは」の5つとは? 東日本大震災を経験した被災ママに聞く>を読む

MENU 石巻市の日和幼稚園の悲劇から学ぶ、大人の責任 家でも学校でもない場所で被災したとき、子どもは動けるか 災害時は「安全な場所にいる」と知るだけで安心できる

石巻市の日和幼稚園の悲劇から学ぶ、大人の責任

――災害にかかわるイラストの仕事も多いアベナオミさんですが、印象に残っているお仕事はありますか?

 石巻市の日和幼稚園をご存知ですか? 東日本大震災のときに、5人の園児が幼稚園バスで命を落としました。子どもたちは園の判断で、園バスに乗せられて海沿いに向かいました。そこで津波と火災に巻き込まれて亡くなったのです。幼稚園は高台にあり、園にさえいれば安全だったはずなのに……。

 2022年、遺族の方々が制作した「命を守るために」というリーフレットに、当時の状況を伝えるイラストを描かせていただきました。取材のために日和幼稚園の周辺を歩き、当時の話を聞くなかで、「これは防げた死だった」と改めて思いました。

幼稚園バスに乗せなければ。

園バスから子どもたちをおろして、幼稚園に引き返していたら。

運転手さんが幼稚園に戻ったときに、園バスの場所を保護者に伝えていたら。

……いくつもの場面で子どもたちを救える可能性はあったのです。

――なぜ、子どもたちを救うことができなかったのでしょう。

 さまざまな理由があると思いますが、防災マニュアルの不徹底が大きいと思います。日和幼稚園には防災マニュアルがあったのに、職員には周知されていませんでした。誰も読んでいなかったから、災害時にどうすればいいかもわからなかったそうです。

日和幼稚園遺族有志の会のホームページはこちら⇒https://www.311hiyori.com/

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神素子
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