明日9月14日は「コスモスの日」です。2月14日のホワイトデーから半年たった明日、恋人同士がコスモスを添えたプレゼントを交換して愛を確かめ合う日といわれています。ところで、コスモスは漢字でどのように書くでしょう。正解は「秋桜」…と思っている方が多いのでは。今では「秋桜」と書いて「コスモス」と読むのが広く一般的となりましたが、実はこの読み方は、昭和のあの歌からはじまったのでした。
この記事の写真をすべて見るコスモスは明治に“来日”した外来種。秋の季語。
コスモスの和名は「秋桜(あきざくら)」という、いかにも日本らしい名前ですが、実は明治のはじめごろに“渡来”した、りっぱな外来種です。容易に栽培でき、丈夫で手間がかからないので、明治の末には全国的に広まったようです。
原産地はメキシコなので、栄養分が少ない乾燥した土地を好みます。水やりや施肥をする必要がないので、園芸初心者にもおすすめです。
在来種は白、ピンク、赤の3種類ですが、今では品種改良により、黄色や黒(チョコレート色)など、さまざまな種類のコスモスも増えています。夏の早咲きから秋の遅咲きまで、咲く時期もいろいろですが、「秋桜」の名の通り、秋の季語です。花言葉は「調和」「謙虚」「美麗」。群生が似合う花に似つかわしい花言葉です。
宇宙をあらわす「コスモス」と語源は同じ。花も宇宙も秩序だった様子を表す
「コスモス」というと、真っ先に花を思い浮かべますが、不思議なことに、宇宙を表すときも「コスモス」という言葉を使います。花と宇宙…。どこにつながりがあるのでしょう。
「コスモス」の語源は、ギリシャ語の「kosmos」に由来します。これは、「秩序」「美しい」「調和」などを意味します。
宇宙を、統一された調和のとれたシステムととらえるときに、「コスモス」という使い方をします。「カオス(混沌)」の対義語であるといえば、わかりやすいかもしれません。
宇宙は「コスモス」以外にも、「スペース」や「ユニバース」ともよばれます。「スペース」は、空間としての宇宙、「ユニバース」は、観測できるすべてを含めた宇宙を表します。「コスモス」という呼び方は、どちらかといえば思想的・哲学的なニュアンスが含まれます。
一方、群生で咲いていることが多い花のコスモス。同じ時期に、同じくらいの高さで、整然と咲く様子は、まるで秩序だった宇宙のシステムのように見えるのでしょうか。宇宙と花。意外なところでつながっていました。
「秋桜」と書いて「コスモス」と読ませたのは、あの歌を作詞したあの人の仕業…
コスモスは外来種なので、和名が「秋桜」であっても、それを「コスモス」とは読みません。「秋桜」と書いて「あきざくら」と読みます。逆に、日本に古くからある「女郎花(おみなえし)」や「百日紅(さるすべり)」などは、当て字の漢字があり、古くは万葉集や古今集などでも詠まれています。
では、なぜ「秋桜」と書いて「コスモス」と読むようになったのでしょうか。それは、昭和52年に山口百恵が歌った「秋桜」という歌謡曲が大ヒットしたからなのです。嫁ぐ娘が母を思う気持ちを歌った歌で、当時の山口百恵は18歳でした。
作詞作曲はさだまさし。曲のタイトル「秋桜」を「コスモス」と読ませ、歌詞の中でも「秋桜」と表記して「コスモス」と読ませました。
「秋桜」と書いて「コスモス」と読ませる…。当時の歌謡曲は、キーワードとなる漢字を違う読み方で読ませるのがはやっていて、有名なところでは「本気」と書いて「マジ」、「恋敵」と書いて「ライバル」、「運命」と書いて「さだめ」などなど。これら3つは幾分「無理矢理感」が感じられますが、「秋桜」と書いて「コスモス」は図鑑や難読漢字にも取り入れられるほどで、歌の世界から抜け出し、ほぼ一般化しています。今では「秋桜」を何の疑問もなく「コスモス」と読む人が多いのではないでしょうか。
「コスモス」を食べてみよう!! サラダの彩りに。フラワーソースも
コスモスが食べられることをご存じですか。花びらを利用する、いわゆるエディブルフラワーとして食べることができます。特別な効能があるわけではありませんが、ビタミンAが多く含まれています。
コスモスの花びらは、野菜サラダやフルーツサラダに入れて、彩りを楽しむことができます。香りはシュンギクに似ていて、味はキクのようにほんのり苦みがあります。
色が紫を帯びたクリムソンという種類などは、ジュースやゼリーなどをつくることができます。花びらをゆでた後、よくしぼり、煮汁としぼり汁を合わせて砂糖で煮詰めると、さわやかなフラワー・ソースができます。
(花屋さんで売っている観賞用のコスモスには農薬や延命薬が使われているので、食べてはいけません)
秋を代表する花、コスモスは、庭や公園、道端に咲いていて、私たちの暮らしの中でとても身近な花です。そんなコスモスを漢字で書くと「秋桜」だと信じている人は多いのではないでしょうか。今では当たり前のように使われていますが、それが、あの方の仕業だったとは、意外と歴史が浅かったのですね。そんなコスモスは今、見ごろを迎えていて、日本のあちらこちらでコスモス・フェスタが開催されています。今年はコスモスの花を眺めるとき、ふと、あの方の顔が浮かんでしまうかもしれませんね。