コロナ禍も落ち着き、不動産の売買を考えている人も多いのでは。だが、不動産の仲介市場では、業者が手数料の最大化を最優先にしがちだ。売り手や買い手は、どう対処すればいいか。
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信じがたい売買があったと話すのは、らくだ不動産(東京都渋谷区)の山本直彌副社長。
東京都世田谷区のマンションを売ろうとした人が、ある大手不動産会社に仲介を依頼したものの、半年間も売れなかった。その後、らくだ不動産に依頼があったが、1週間ほどですぐに売れた。買い手は、その大手不動産の他の支店の客だったという。なぜ、同じ会社なのに、その大手不動産では買い手がつかなかったのか。
不動産売買の仲介手数料の上限は、価格が400万円以上の場合、3%プラス6万円と消費税。売り手と買い手のそれぞれが仲介業者に手数料を支払う。営業担当者は双方からダブルで手数料を稼ぎたかったため、同じ会社内でも、他の支店に情報を共有せず、自ら買い手を探し出すことにこだわったという。
山本さんは「同じ会社なのに他支店の営業目標を意識して営業担当者が情報の囲い込みをしていた」と話す。
こんな事例もある。東京都大田区でマンションを探していた人が、らくだ不動産に仲介を依頼した。大手不動産系列の仲介会社が販売価格5480万円の物件を扱っていた。らくだ不動産は、買い手がその値段で買いたいと希望したので、その仲介会社に問い合わせると、内覧は1カ月後になると告げられた。1カ月後に再び問い合わせてみると、この物件はすでに5200万円で売却されていたという。
山本さんによると、この仲介会社が売り手も買い手も抱え込み、売買手数料をダブルで稼いだ。営業担当者は他の業者の内覧をあえて遅らせ、自ら買い手を見つけるため、販売価格を5200万円に値下げさせて売却したという。
これらの事例はここ1年以内で起きたという。山本さんは「こうしたことは一般的に横行している」と話す。