修繕計画は60年先まで考えて

資金トラブルを防ぎ、マンションの廃虚化を防ぐためには、長期計画が重要だ。一般的な長期修繕計画は30年先までが多いが、土屋さんはその倍の「60年後までを見据えるべきだ」と話す。

「まず、60年間でかかる費用をざっくりでも試算して、少なくとも85%から90%ぐらいを賄える水準に修正することです」

そして、多くのマンションは大規模修繕の周期を見直すべきだという。これまで大規模修繕は12年周期が一般的とされてきた。

「500戸のタワマンの場合、1回の大規模修繕の費用はおおむね10億円程度、1世帯あたりの負担は200万円程度です。12年周期の場合、60年で5回も工事を実施することになる。大規模修繕の対象とならない設備の工事も必要となることを考えると、500戸で110億円積み立てても、資金が不足する可能性が高くなります」

土屋さんから見て無理のない計画に見直している管理組合のほとんどは、大規模修繕工事の周期を16年から18年に変更済みだという。18年周期なら、3回目の大規模修繕は54年目。12年周期と比べると、60年時点では計画上2回も工事を減らすことができる。

管理力はマンション選びの重要指標

 それでも資金が不足して、マンションの健全な維持管理のために修繕積立金を値上げするほかないこともある。

「資金不足の一番大きな要因は、管理組合(所有者)の維持管理への無関心です。タワマンに限らず、中古マンションを購入するなら、エリアや駅からの距離、日当たりなどと同様に、マンション管理組合の運営状況にも注意を払って選んでいただきたい」

 最後に土屋さんは「タワマン」についてこう話す。

「タワマンは、十分な支払い能力を有する人が住む分には何の問題もありません。設備が複雑で適切に管理しなければリスクが高いのは事実ですが、深刻な資金不足が発生するかどうかは、管理組合の運営次第です」

 修繕積立金計画や防災訓練の実施、管理組合員同士のコミュニケーションの場の創出など、健全に管理されているタワマンも多く存在する。購入を決める前に、まずは管理組合の運営状況を確認することだ。

(ライター・内田 陽)

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