夏真っ盛りを迎える日本列島の中でも、比較的涼しい東北地方。
それでも、8月の初旬にどこよりも熱狂的な夏を感じさせるのが東北の最北端・青森です。
8月1日からは「弘前ねぷた祭り」、2日からは「青森ねぶた祭り」が開催されます。
青森はもちろん、日本を代表するふたつの夏祭り。
共通点も多いものの、名前や掛け声が違うなど対照的な魅力も興味深いもの。
青森の夏をにぎわす「青森ねぶた」と「弘前ねぷた」のみどころをご紹介します。
「ねぶた」「ねぷた」の語源
同じように大きな山車を引きまわす「青森ねぶた」と「弘前ねぷた」ですが、なぜ祭りの名称が異なるのでしょう?
語源については諸説ありますが、有力なのが「眠たい」という言葉から派生したというもの。
津軽弁で「眠たい」を「ねぶて」といいます。
収穫の時期を迎える秋に眠たくなって農作業に支障が出ないように……、災いが起こらないように……という思いをこめた「眠り流し」という灯籠流しの行事からきているといわれています。
青森市を中心とした北津軽や下北半島などでは「ねぶた」。
弘前市を中心とした津軽方面では「ねぷた」と呼ばれています。
いずれも語源は同じとされており、地域の違いによってなまり方が変わっていったのではないかといわれています。
出陣の「弘前ねぷた」、凱旋の「青森ねぶた」
ルーツは同じと見られている「弘前ねぷた」と「青森ねぶた」ですが、そのスタイルは少し違います。
「弘前ねぷた」は「出陣のねぷた」と称されます。
「ヤーヤドー」という掛け声が戦いの出陣の声だといわれているのです。
弘前ねぷたは扇形が主流で、表面には三国志などに現れる武者の絵、裏面には美人画や水墨絵が描かれているのが特徴です。
一方の「青森ねぶた」は「凱旋のねぶた」といわれています。
戦(いくさ)から帰ってきた姿を表現しているとされ、掛け声も「ラッセラー」で弘前とはかなり異なる響き。
青森ねぶたは人形の形のものがほとんどで、歌舞伎を題材にしたものが多いのも弘前とは違った特徴になっています。
また、「青森ねぶた」は太鼓や笛の音色にあわせて「ハネト」と呼ばれる踊り子が盛り上げ、とても躍動感がありにぎやかな祭りです。
対する「弘前ねぷた」は、ゆっくりとしたペースで山車(だし)を引きまわします。
そのため、「静」の弘前ねぷた、「動」の青森ねぶたといわれ、異なる魅力をもつのも興味深いところですね。
終わることのない「ねぶた」と「ねぷた」
青森ねぶたも弘前ねぷたもそれぞれ形に違いはありますが、どちらもたくさんの人の手によって、多くの時間を費やし作られています。
一台のねぶた、ねぷたに対し、約300人もの人数がかかわり制作されているのだとか。
青森の人たちが精魂を込めて作るねぶた、ねぷた。
ところが、何と終わったら解体されてしまうのがほとんど……。
コンクール受賞作品などは展示物として残される場合もありますが、ほとんどは一度きりのお披露目となるのです。
また、ねぶた師が下絵を描くところからスタートし、5月頃から骨組みが始まります。
ねぶたに携わる人々は、祭りが終わっても、また次の祭りへと注力していくのです。
── 対照的な魅力を見せる「青森ねぶた」と「弘前ねぷた」。
8月1日、2日まではまだ5日ほど時間があります。
興味のある方や、時間に余裕がある方であれば、1年でもっとも熱気に満ちた夏の青森、そして、東北の夏をぜひご堪能ください!