注目対局や将棋界の動向について紹介する「今週の一局 ニュースな将棋」。専門的な視点から解説します。AERA2024年12月2日号より。
【貴重写真】和服じゃない!スマホ片手にデニム姿の藤井聡太さん
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藤井聡太竜王(22)に佐々木勇気八段(30)が挑戦する竜王戦七番勝負の第4局は11月15、16日、大阪府茨木市でおこなわれた。総手数は97手。佐々木が角換わりで秘策をぶつけてリードを奪い、藤井に粘りを許さず、会心の勝利をあげている。
佐々木 「今回は内容がよく指せたかなと思いますし、踏ん張ることができたかなと思います」
藤井 「一方的な将棋になってしまったので。対局を楽しみにしていただいていた方には、申し訳なく思っています」
シリーズはこれで互いに2勝ずつのタイ。若き王者・藤井はこれまでに13回の七番勝負に登場し、そのすべてを制してきた。2勝2敗というスコアですら羽生善治九段との王将戦(2022年度)でしか経験がない。もし次で敗れると七番勝負では初のカド番となる。藤井から見て佐々木との通算対戦成績はこれで6勝4敗。ほとんどの棋士を相手に圧倒的に勝ち越している藤井にとっても指し盛りを迎えた天才・佐々木はやはり難敵だ。11月27、28日におこなわれる第5局も目が離せない。
今年度、藤井は叡王戦五番勝負で伊藤匠七段(現叡王)にタイトルを明け渡し、日本シリーズ準決勝で広瀬章人九段に敗れて3連覇を逃した。逆にいえば現在のところ、その2棋戦でしか敗退していない。竜王戦第4局を終えた時点で年度成績は22勝8敗(勝率0.733)。実力も勢いもあるトップクラスを相手にし続けてこの成績は、素晴らしいというほかない。
藤井はデビュー以来の7年度すべてで、勝率8割台を続けている。そんな棋士は空前であり、おそらくは絶後だ。さすがの藤井も現状、今年度の8割達成は厳しそうにも見える。藤井本人は一貫して自身の成績を気にしていない。一方で、大記録継続を望むファンもまた多いだろう。(ライター・松本博文)
※AERA 2024年12月2日号