先の衆議院選挙で自民党とともに大敗した公明党では、石井啓一代表が自らも落選した責任をとって辞任。代わりに斉藤鉄夫国交相が党代表に就任し、国交相の後任には公明党の中野洋昌衆院議員が就任する見込みとなった。その中野氏が衆院選の最終盤で、平伏するように頭を下げていた相手は、東京都の小池百合子知事だった。
「やっぱり小池知事のパワーはすごいもんだ。中野氏も小池知事の演説で頭を下げまくった甲斐があったよ」
こう話すのは、公明党の現職国会議員、A氏だ。
衆院選で公明党は議席を32から24へと大幅に減らした。とくに大阪府では公明が議席を持っていた4つの小選挙区で日本維新の会が立てた対立候補に全敗。公明は大阪で議席を失った。
一方、お隣の兵庫県でも公明が議席を持っていた2つの小選挙区で維新が対立候補を立てたが、こちらはいずれも公明が維新に競り勝った。そのひとつ、兵庫8区(尼崎市)で勝利したのが中野氏だった。
冒頭でA氏が話したのは、選挙戦の最終日、小池百合子都知事が、兵庫県内の小選挙区に公明候補の応援に入ったときの様子だ。
中野氏の応援でJR尼崎駅前に駆け付けた小池知事は、トラックの荷台に階段をつけて設置された演台に昇り、中野氏と並んだ。この演台は小池知事が8月に神宮球場でプロ野球の始球式に登板した際に足を剥離骨折し、選挙カーに上がるのが困難なために中野氏陣営が特別に設置したものだという。
駅前のロータリーは1階だけでなく、ショッピングモールにつながる2階までぎっしりと人で埋め尽くされた。
集まった聴衆には公明党の支持母体である創価学会の関係者も多かったようで、学会信者である有名芸能人の親族が記者に、「ご無沙汰ですね」と声をかけてきた。以前、取材で面識があった人で、話を聞くと今回は小池知事の演説があるので、「ぜひ」と動員されてきたという。
小池知事は兵庫県出身。衆院議員に初当選した時の地盤は中選挙区制の旧兵庫2区で、尼崎市も含まれていた。
マイクを握った小池知事は、
「兵庫生まれ、六甲おろしが歌える東京都知事です」
と笑いをとりながら、応援演説。
「中野さんに国会で働いてもらう必要がある、いかがでしょうか」
と中野氏への投票を強く訴えると、万雷の拍手がわきあがった。まさに「小池劇場」だった。