斎藤啓太さん(さいとう・けいた)/日本インフォメーション代表取締役社長。経営全般を業務としつつ、Z世代研究など様々なテーマのリサーチに携わる(写真:本人提供)

投資している「2割」

 投資や貯蓄についてはどうか。新NISA制度が始まり、世間に投資の意識は根付きつつあり、学校教育で金融リテラシーを学ぶようにもなってきている。

「貯蓄・投資について、興味はあっても実際に投資しているという割合は2割程度で、いずれか対策している人の7割近くが貯蓄メインです」(斎藤さん)

 同社の29歳の女性はZ世代のリアルな声をこう紹介する。

「同世代間で投資の話題が出ることはありますが、実際に行動に移している人は少ないです。関心はあっても、経験や知識の不足、元手となるお金がそもそも少ないということもあり、不安が先立って手を出しづらいと考えるZ世代は多いと思います」

 同僚の24歳の女性はお金についてこう考える。

「不安な将来に備え、まとまったお金は手元に欲しいので増やしたいなとは思っていますが、自分の『好き』にお金をかけるために、家賃など固定費は抑えるようにしていますし、家電は必要最低限そろっていればいいです。必要以上にはいらないという感覚でしょうか」

 所有欲も薄いのは、ライドシェアやルームシェアなど、シェア文化が普通だからでもある。

 Z世代は、モノがあふれ、選択肢が多い現代だからこそ堅実で、自分にとって必要か不必要かを賢明に見極めている。今瀧さんは代弁する。

「Z世代は幼いころから『人生100年時代』と教わってきていますが、キャリア設計についてロールモデルが出てくるのはこれからなので、お手本がいないんです。お金の使い方を含め、それぞれが手探りで人生を考えている。未来が不透明な今、お金は生活や趣味など、QOL向上のためのあくまで手段で、僕らはそもそもお金持ちに憧れる機会がなかった世代なんです」

(編集部・秦正理)

AERA 2024年10月28日号より抜粋