お金があっても、幸福度はいずれ頭打ちになる(撮影/写真映像部・佐藤創紀)
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 Z世代とそれ以前の世代では、お金への価値観が大きく異なるという。実際のZ世代の声も踏まえながらその違いや理由を考える。AERA2024年10月28日号より。

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 長らく停滞する日本経済は「失われた30年」とも呼ばれる。その間に生まれた、いわゆるZ世代のお金に対する価値観とはどんなものだろうか。

「一定のラインのお金は必要だと思っていますが、基本的にはお金に興味がないんです」

 そう語るのは、Z世代に特化した企画・マーケティング会社「僕と私と」代表の今瀧健登さんだ。26歳の今瀧さんはまさにZ世代の一人。「年収800万円理論」を標榜する。

「世界的に見て、年収800万円を超えると幸福度は頭打ちになると言われています。そのラインを越えてしまえば、さらに上を目指す必要はないと考えています」

 同社のメンバーは7割がZ世代。この理論をもとに、年収800万円に到達すると勤務時間を減らしていく仕組みを試みている。

「1時間当たりの仕事の価値を上げるという考え方です。10時間で10万円を稼げていた人が20時間で20万円を稼ぐのは当たり前で、そこを10時間で20万円稼げるようにする。時間は有限なので、いかに効率よく稼ぐかという考え方が基本にあります」

 同社はジョブ型雇用のフルフレックス制を採用していることもあり、勤務時間という概念そのものがない。メンバーの副業率は100%で、個人で会社を経営しながら年収800万円に達している人もいる。午前中のミーティングはなくして、家族との時間を持つ、趣味に時間を割くなど、個人に合わせた時短勤務が実現されている。

タイパ、QOL重視

 タイパ(タイムパフォーマンス、時間対効果)を重視すると言われるZ世代特有の考え方がそこからは垣間見える。優先されるのはお金の多寡よりもQOL(生活の質)の向上で、お金持ちに対する憧れも他世代に比べてあまりない。マーケティングリサーチを専門にZ世代研究も行う日本インフォメーションは昨年、Z世代の男女約1600人を対象に「消費やお金に対する考え方」の調査を行った。代表取締役社長の斎藤啓太さんは指摘する。

「収入アップや節約など、増額を願う声は多いものの、約4割が『稼ぐためにたくさん働くのは嫌だ』と答えました。何が何でも稼ぎたいという考えはZ世代にはないことがうかがえます」

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