お金に対する執着はなく、大切にすべきはお金より時間。そうした考えの源には、「どうせそんなには稼げない」と先行きの見えない日本の将来像に悲観しているからとも分析したくなるが、今瀧さんはこう語る。
「社会情勢はあまり関係ないと思います。生まれたときから経済状況に変わりはなく、いわゆる“いい時代”を知らないので、比較するという考えすらない。執着がないのはむしろ、SNS中心の世界にいて、お金持ちという存在を見る機会が減ったから、とも言えるかもしれません。さらに、キャッシュレス社会が進んで現金を見る機会も激減しました。100万円の厚みと言われてもリアリティーがなく、憧れを持ちづらいんです」
ハイブランド買わない
テレビも見なくなり、華美にふるまうお金持ちは目にしない。情報取得はもっぱらSNSで、自分が見たいもののみを閲覧する。インスタグラムでハイブランドで着飾るアカウントを見ることはあっても、自分事としては見ていない。
「僕と私と」が昨年、Z世代約600人を対象に、ファッション情報サイトと共同で行った意識調査に興味深い結果がある。「お金が好きなだけあったとしたら、ハイブランドを買いたいと思うか」の質問に対して、「とても購入したい」「購入したい」と回答した割合は54%だった。
「『購入したい』の数字に気を取られがちですが、むしろ5割近くのZ世代はハイブランドを買わないと答えているわけです。『お金が好きなだけあっても』という前提がありながら買わないという選択肢を取る割合がそれだけいるというのはインパクトがある結果です」(今瀧さん)
かつてであればテレビや雑誌広告で目にしたハイブランドだが、若者はテレビも雑誌も見ず、SNS広告は、よりお金を持つ上の世代がターゲットにされ、触れる機会は圧倒的に少ない。
「ハイブランド自体を知らないという層が生まれていると思います。そういったものに触れ、これが欲しいからバイトや仕事で稼ごうという感覚にすら至らないZ世代が多くいると感じています」(同)
Z世代は何にお金を使うのか。斎藤さんは自社の調査をもとにその消費傾向について解説する。
「Z世代がお金をかけたいものとして、生活上必要な食費を除けば、『推し活・オタ活』が最上位に挙がります。次いで、旅行やレジャー、ファッション、スイーツなど、自分の『好き』に対してお金をかけたいと答えています。高級であるかどうかよりも自分が好きかどうかに価値判断があります」