じつは、中国の学部生時代に別の会社でインターンをしたことがあった。その会社では、些細なことであっても、随時上層部への報告や承認を得る必要があった。上下関係の堅苦しさを感じた。楊は、そのプロセスをムダと感じた。対してソニーは、職場の風通しがよく、仕事のために仕事をするようなムダが少なく感じられたのだ。

「中国の企業も、並行して見ていました。金銭的な待遇は、正直、中国企業のほうがよかった。でも、ソニーのほうが働きやすそうだった」

 と、楊はいう。

センサーとAIを組み合わせる

 入社後は1年間、厚木テクノロジーセンターでToFセンサーの開発に携わった。

 ToFセンサーとは、物体に向けて光のパルスを送信し、そのパルスが物体に当たって反射し、戻ってくるまでにかかる時間を計測することにより、物体までの距離を測定するセンサーだ。クルマや産業用ロボットに搭載されているほか、スマートフォンにも搭載され、さまざまな用途に活用されている。

 楊にとっては、ソニーのセンサーを学ぶ絶好の機会だった。そして、「センサーとAIを組み合わせておもしろいことをしてみたい」という希望を叶えている。AI関連の専門知識を生かせる最先端の分野だ。

『ソニー 最高の働き方』(片山修・著/朝日新聞出版)

 楊は、AIやプログラミングの専門知識を備えているだけでなく、日本語と中国語でネイティブレベルのコミュニケーションができる。さらに、大学院時代は東南アジアやスリランカ、ヨーロッパなど世界中から集まった学生と主に英語でコミュニケーションをとっていたため、人種の多様性の中でのコミュニケーションにも慣れている。

「中国を含め、海外のエンジニアと密にコミュニケーションをとる役割は、会社から期待されていたかなと思います」

 と、楊は語る。

 こうした最先端のAI技術を身につけた人材は、世界のグローバル企業から引く手数多だが、彼女は「センサーの技術」と「職場の雰囲気」でソニーを選択したわけだ。「待遇」ももちろん重要だが、それ以外の基準で優秀な人材を引きつけられるところは、ソニーの企業文化の賜物といえるだろう。

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