10月1日の首相指名で新首相となった石破茂氏(67)。自民党総裁選の決選投票では、1回目の投票でリードされた高市早苗氏を大逆転するというドラマチックな展開で総裁の座を勝ち取った。その後の人事で、石破氏は高市氏に総務会長への打診をしたが固辞され、2人の間にはすきま風が吹く。だが、石破氏の地元・鳥取県の支援者や元秘書らを取材すると、石破氏と高市氏の奇妙な「縁」も見えてきた。
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9月27日、今村雅弘元復興相は自民党総裁選の選挙管理委員会のメンバーとして壇上に座っていた。
石破氏が新総裁に選ばれた瞬間は、会場に集まった300人を超える国会議員よりも、先に結果を知ることとなった。発表前、票の確認のために今村氏は投票箱の中を見る立場にあったからだ。
「箱の中には、投票用紙がゴムで束ねて並べてありました。決選投票では石破さんも高市さんもほとんど同じくらいの票の数に見えた。票の束だけではどちらが多いかわからないほどの僅差でした」
結果は21票差で、石破氏が勝利した。
「数字を見た瞬間、えーこんなことがあるのかと思ったね(笑)。私も総裁選の選挙管理委員は今年で3回目だけど、今回が一番ドラマチックでした」
今村氏は旧二階派だが、「1回目も2回目も石破氏に投票した」と語る。今村氏は石破氏との交流についてこう話す。
「衆院予算委員会では、50音順の並びで石破さんと私はいつも隣に座っていました。隣同士だから、自然と話をするようになってね。石破さんは鉄道マニアで私は九州の旧国鉄(現・JR九州)の出身なので、共通の話題で仲良くなりましたね。いくら石破さんが鉄道マニアだといっても、私にはかなわないですよ。石破さんからは『鉄道の話をいろいろ聞かせてくれ』と言われていました(笑)」
石破氏はこれまで「真面目だけど付き合いが悪い」と言われてきたが、今村氏はこう話す。
「本当はそんなに付き合いが悪いというわけではないのですが、群れをなすことは好まない。だけど、国会議員たちは政治家として信頼感は持っているから、評価は高いですよ」