パステルカラーのラメ入りの「すな」で印刷された文字はキラキラと美しく、ザラザラした手触り。周囲には、その文字で始まる楽しいイラストが添えられている。「あ」のページにはアヒルやアジサイ、「い」のページにはイチゴや家、といった具合だ。
別の4歳の女の子は、指で文字をなぞりながら「ピンク好き!」「ザラザラだね」と感じたことをそのまま口に出して、楽しそう。メガネのイラストを指さして「パパ、いつもメガネ探してるよね」と話す彼女に、まわりも笑顔になる。
子どもたちは小さな手で文字をなぞり、イラストを指さしては笑う。前出の園長や教師たちによれば、「しののめモンテッソーリ子どもの家」に通う子どもたちは、木製の板に彫られた文字を木のペンでなぞったり、ガラス板の下に置かれた書き順を示した文字をチョークで書いたり、消したり。いつしか正しい書き順で文字が書けるようになるという。
就学前に「知りたい」気持ちを伸ばすことで、その後の学びが楽しくなる。ひいては、人と協力して工夫を凝らす経験をすることで、昨今重要視されている「非認知能力」の伸長にもつながるという。
体験イベントに息子とともに立ち寄った男性がつぶやいた。「自分が子どものころに、こんな教育を受けたかったですね」。
(ライター 浅野裕見子/写真 生活・文化編集部 上原千穂)