『教養として知っておきたい映画の世界』コトブキツカサ 日本実業出版社
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 「映画好きです」と言っても、その程度は実にさまざまです。話題の新作映画は劇場に足を運んで鑑賞したい人、古き良き名作映画が好きな人、製作者のインタビューを読んで映画の裏側を知りたい人などなど、書き出したらキリがありません。こうしたことからも分かるように、映画は一方向だけではそのすべてを味わい尽くせないほど奥深い世界です。

 そんな奥深い世界を多角的視点から解説した書籍『教養として知っておきたい映画の世界』は、映画好きな人にはぜひ読んでもらいたい一冊。著者は映画パーソナリティ/エンタメ評論家のコトブキツカサさんです。Web ラジオ「コトブキツカサのオールナイトニッポン」や、YouTube チャンネル「コトブキエンタメ同好会」などで、国内外の映画情報を精力的に発信。年間映画鑑賞数は約500本にものぼり、毎年ハリウッドにてアカデミー賞の現地取材もおこなっている人物です。

 コトブキさんが綴る、映画の歴史や裏話はどれも興味を引かれるものばかり。例えば、ジブリ作品は海外(北米を除く)であればNetflixなどで観られますが、日本では観ることができません。当初は「日本の作品なのに!」と嘆く声も多く見られました。しかしなぜ日本では観られないのかについては、よく知らない人も多いはず。実はこんな理由がありました。

「ジブリ作品の国内放送権を日本テレビが保有しているからですが、ジブリ作品の製作委員会にはNetflixなどと競合する同テレビ局やディズニーなどが参加していることも影響している、ともいわれています」(同書より)

 他にも、キャメロン・ディアス、ドリュー・バリモア、ルーシー・リューによる『チャーリーズ・エンジェル』シリーズはなぜ銃を使わず生身の身体で戦うのか、日本の映画料金は世界と比べて高いのか、残念な邦題ができるのはなぜかなど、「そうだったのかー!」とひざを打ちたくなる話が盛りだくさんです。また、コトブキさん自身が体験したトム・クルーズとのエピソードにも驚かされます。

 さらに同書の最大の特徴は、コトブキさんが考案した「映画心理分析」があること。「その時、思いついた好きな映画を3本、言ってもらえれば、あなたの性格がわかる」というエンタメで、私も実際にトライしてみたところ「確かに......!」と思わず納得してしまいました。詳しい内容はぜひ同書で確かめてみてください。

 同書は第1章「商業映画の誕生と発展」、第2章「映画業界の現状と課題」、第3章「映画の歴史を変えた10作品」、第4章「映画の世界の表と裏」、第5章「映画のウィスプ 知っていると見方が変わる意外な真実」、第6章「映画にまつわる個人的文化資源」の全6章と付録「コトブキツカサの追憶 映画人との個人的エピソード」の構成です。知っている作品でも知らない作品でも、「この映画ってこんなに面白いんだ」と目からうろこの情報が盛りだくさん。読むと、これまでとは違った視点で映画を楽しめるようになるはずです。次に観る映画を選ぶ前に、同書を読んでみることを強くおすすめします。

[文・春夏冬つかさ]