宮内庁を長く担当するある新聞記者は、皇族が「残念」という言葉を使うことはほとんどないと言っていた。そう、佳子さまの渾身(こんしん)の「はて?」。心で拍手を送りつつ、この「はて?」は、やがて自身に返ってくるのではと心配になる。女性皇族の苦しさを抱えながら、ジェンダー平等に心を寄せる佳子さま。考えれば考えるほど、切ない。
今と切り結べばつらくなる。だからだろうか、愛子さまが担っているのは専(もっぱ)ら「仲良しの天皇ご一家」の要としての役割で、4月から始まった宮内庁のインスタグラムでも、キュートな愛子さまは人気の的だ。
9月3日、「ストラディヴァリウス・コンサート2024ご鑑賞」での愛子さまは光る素材の装いで、もちろんご一家は定番中の定番、リンクコーデだった。
愛子さまは、皇室の「普通さ」を訴える役割も担っていると思う。秋篠宮家の悠仁さまへのバッシングを思えば、無難な選択だろう。それでは愛子さまの「せっかくの高い能力が十分に生かされていない」ことにならないか。老婆心だと承知している。
最後に新川和江さんの「ふーむの歌」を紹介する。
〈ふーむ ふーむ 世界は ふーむでいっぱいだ〉と始まる。〈ふーむ ふーむ ぼくらも ふーむを探そうよ〉で終わる。
女性皇族が「ふーむ」や「はて?」を自由に語れる日は来るだろうか。
(コラムニスト・矢部万紀子)
AERA 2024年9月23日号