宮内庁を長く担当するある新聞記者は、皇族が「残念」という言葉を使うことはほとんどないと言っていた。そう、佳子さまの渾身(こんしん)の「はて?」。心で拍手を送りつつ、この「はて?」は、やがて自身に返ってくるのではと心配になる。女性皇族の苦しさを抱えながら、ジェンダー平等に心を寄せる佳子さま。考えれば考えるほど、切ない。

 今と切り結べばつらくなる。だからだろうか、愛子さまが担っているのは専(もっぱ)ら「仲良しの天皇ご一家」の要としての役割で、4月から始まった宮内庁のインスタグラムでも、キュートな愛子さまは人気の的だ。

 9月3日、「ストラディヴァリウス・コンサート2024ご鑑賞」での愛子さまは光る素材の装いで、もちろんご一家は定番中の定番、リンクコーデだった。

 愛子さまは、皇室の「普通さ」を訴える役割も担っていると思う。秋篠宮家悠仁さまへのバッシングを思えば、無難な選択だろう。それでは愛子さまの「せっかくの高い能力が十分に生かされていない」ことにならないか。老婆心だと承知している。

 最後に新川和江さんの「ふーむの歌」を紹介する。

〈ふーむ ふーむ 世界は ふーむでいっぱいだ〉と始まる。〈ふーむ ふーむ ぼくらも ふーむを探そうよ〉で終わる。

 女性皇族が「ふーむ」や「はて?」を自由に語れる日は来るだろうか。

(コラムニスト・矢部万紀子)

AERA 2024年9月23日号

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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