政府の防衛力強化の取り組みは、サイバー対策や宇宙などにすそ野が広がっている。その結果、恩恵がおよぶ企業も今後はもっと広がっていきそうだという。
その一つが、たとえばQPS研究所だ。九州大学発のベンチャー企業で、地球観測用の人工衛星の開発・製造や、衛星を通じて得られる画像データの販売などを手がける。
三井さんは言う。
「天候や時間帯に左右されずに、常時、地球を観測できる点が強み。独自開発の小型衛星は製造や打ち上げのコストを低く抑えられ、防衛省向けの事業も展開しています。23年12月に上場したばかりで、直近の24年5月期決算は最終赤字でしたが、防衛のほか、防災やインフラ管理、森林監視など事業の拡大が期待され、将来のポテンシャルは大きい」
続いて三井さんが挙げたのは、新明和工業。ダンプやごみ収集車、ミキサー車などさまざまな特装車両をつくっている。国内唯一の飛行艇メーカーとしても知られる。
「防衛省向けでは、海上や離島での救助や支援活動に貢献する水陸両用の『US-2』型の救難飛行艇を手がけています。足元ではこの飛行艇の生産減少が見込まれていますが、民間の航空機向け事業や特装車両は好調で、25年3月期(連結)は増収増益の見通しです」(三井さん)
同社株は、株式の投資指標の面からみても有利だという。
船舶や産業用、防衛分野などに展開する計器メーカー、東京計器は2月に那須工場(栃木県那須町)に防衛関連機器を扱う新しい工場棟を建てると発表した。「今後数年間にわたって予想される旺盛な需要への対応や将来の新たな製品開発を行う」ことなどが狙いで、12月に完成する予定だ。
「もともと主要な販売先が防衛省向けで、レーダー警戒装置や慣性航法装置などを手がけています。防衛予算増に合わせて、同社株も素直に買われる傾向があります」(三井さん)
防じん・防毒マスク大手の興研は、防衛省向けの防護マスクを1985年から一手に引き受けているという。その意味では同社も防衛費増額の流れに素直に乗っている企業の一つといえるかもしれない。
(AERA.dot編集部・池田正史)
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